皮膚を科学する

皮膚科医が言う「イボ」って何? どうして盛り上がるのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 イボって何なのか。どうして皮膚が盛り上がるのか。「山手皮フ科クリニック」(東京・高田馬場)の豊福一朋院長が言う。

「一般的に『イボ』は俗称で、イボ状の病変ができる皮膚病は数多くあります。しかし、皮膚科医が狭い意味で言う『イボ』は、通常は『ヒトパピローマウイルス(HPV)』が感染してできる『ウイルス性疣贅(ゆうぜい)』のことを指します」

 HPVはDNAの違いで150種類以上もの型が見つかっており、その型によって感染しやすい場所やイボの見た目が異なるという。

 子宮頚がんもHPVの感染が原因だが、その型は主に16型と18型。外陰部にできる性感染症の尖圭(せんけい)コンジローマは6型と11型。そして、手足や顔にできる一般的なイボは「尋常性疣贅」と呼ばれ、2型、27型、57型の感染でできる良性型だ。

「感染経路は、皮膚や粘膜にできた小さな傷からウイルスが侵入します。ですから、こすれる部位にできやすい。また、体の免疫力が低下すると、イボができやすかったり、数が増えたり、治りにくかったりすることが知られています」

 皮膚の構造は、表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」とある。表皮は角質細胞が何層にも重なってできているが、ウイルスが感染するのは表皮の最も深い層の「基底層」だ。

 では、どうして皮膚が盛り上がるのか。

「感染した基底層の細胞はウイルスによって細胞分裂が活発になり、正常細胞を押しのけて増え続けます。それはウイルスが増殖するためです。ウイルスが基底層より下に行かないのは、真皮の血液中の免疫細胞に殺されてしまうから。イボがある程度の大きさで止まるのは、栄養の行き届く範囲内の生きた角質細胞内でないと、ウイルス自体が生きられないからです」

 免疫力が高まればイボは小さくなる可能性もあるが、基本的にはウイルスは増殖したまま次の感染(傷口との接触)の機会を狙っている。退治のポイントは免疫力。治療では液体窒素を塗る「冷凍凝固」などが行われるが、これは単にイボを凝固させて取り除くのではなく、わざと炎症を起こさせて免疫力の働きによって治すという。

「昔から伝わる“イボ取り地蔵”の表面には塩が塗ってありました。それでイボをこすると炎症が起きて治るのです。精神的な不安も免疫力を低下させるので、相性のいい主治医に代わっただけでも急に治る場合があります」

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