数字が語る医療の真実

現代の医学にいまも色濃く残る「論理重視」の風潮

「論理を証拠とするのが科学的」――。つまり原因を突き止めなくては科学的な医療を行うことができない、という考え方は一見科学的なように思えます。しかし、原因を突き止めるためには、事実の詳細な観察と検討が必要です。常に先立つ事実があり、その事実に照らして論理を構築していくのであって、事実がなければ論理を構築することはできません。

 洋食や麦飯やぬかによって、「かっけがゼロになった」という多くの事実に沿って論理は構築されなくてはなりません。その事実が示すものは、常に真実とは限りません。バイアスや偶然に影響された見せかけのものにすぎないことも多いのです。しかし、少なくとも論理だけで科学的な決着がつくというような考え方は、医療の有効性を考えるときに全く非科学的なものなのです。

 もちろん、事実だから科学的ということでもありません。高木兼寛の実験も、たまたまその時にかっけが流行しなかっただけという可能性はその時点では排除できなかったわけです。そういう意味では、島薗や大森の比較対照試験の結果まで科学的な決着を見ていないという考え方は、現代から見ても妥当なものだといってもいいものです。

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名郷直樹

「CMECジャーナルクラブ」編集長。東大薬学部非常勤講師。東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員、臨床研究適正評価教育機構理事)自治医科大卒。名古屋第二赤十字病院にて研修後、作手村国民健康保険診療所にてへき地診療所医療に携わる。95年同診療所所長。05年東京北社会保険病院臨床研修センター長。「『健康第一』は間違っている」などの著書がある。

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