末期がんからの生還者たち

村野武範さん<1>「余命は聞かない方がいい」と告げられた

村野武範さん(C)日刊ゲンダイ

「そう言われてもピンときませんでした。痛くもなんともないんですから。そこでは、抗がん剤と放射線の標準治療と、その副作用について説明されました」

■妻が調べた陽子線治療を受けるために東北へ

 髪が抜け、口の中は荒れ、ものが食べられなくなり、歯は抜け、爪は変形し、肌はただれる……。流動食用に胃に穴をあける胃ろうを作ることになり、1~2年は過酷な闘いになると告げられたという。思わず「余命はどのくらいですか?」と聞くと、医師は「それは聞かない方がいいですよ」と言葉を濁したそうだ。

「その時、女房がその医師にたずねたんです。『陽子線治療はどうでしょうか?』って。そうしたら 『どこで何をやっても同じです』って言うもんだから、2人とも黙り込んじゃいました」

 妻は、友人のご主人が末期の前立腺がんを重粒子線で治したという話を思い出し、末期の中咽頭がんが治ったケースをインターネットで必死に調べていたという。そして、陽子線という治療法があり、東北にそれができる病院があることも調べ上げていた。

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