がんと向き合い生きていく

抗がん剤治療は外来での実施が増えている

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 ただ、その後も2週間に1回のスケジュールで同じ治療を繰り返されることになり、Yさんは悩みました。

 Yさんは今の会社に再就職したばかりで、営業の責任者を任されています。月曜日から金曜日までは出勤することができないとなれば、会社を辞めるしかないと思い詰めていたのです。Yさんは難しいだろうと思いながらも、担当医に「土曜日の外来治療は無理でしょうか?」と尋ねてみました。すると、担当医は「土曜日は、私か当番の医師が出勤します。看護科と薬剤科にも大丈夫か聞いてみます。インフューザーポンプは、月曜日の朝、出勤の前に外せますね」と快諾。結局、土曜日の外来治療がOKとなったのです。

 そのおかげもあって、副作用でムカムカした感じは残っているものの、表面上はあたかも何事もなかったように月曜日から出勤できるようになりました。Yさんはその後も会社を休まずに元気に仕事を続け、5回の治療で両肺の影は消失。すでに抗がん剤治療を終了し、再発は見られていません。営業成績も良好だそうで、Yさんは「神様みたい。命の恩人」と、病院に感謝していました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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