独白 愉快な“病人”たち

声帯を削った昆夏美さん「新しい喉で新たな可能性を」

昆夏美さん(C)日刊ゲンダイ

 外出は一切せず、ひたすら病院と薬と筆談で養生しました。でも、2週間目に喉を診てもらっても回復が見られず「手術しかありません」と言われてしまいました。手術をしたら12月復帰は無理。それはまさに“絶望”でした。

 念のため、元の病院にも行きましたが、結果は同じ。ただ手術後の対処が大きく違ったんです。片方は術後3週間は絶対沈黙。もう片方は絶対沈黙は3日間だけで3週間後には歌い始めていいというものでした。

 後者の病院を選んだ結果、1月にギリギリ滑り込みで最後の2日間だけ「ミス・サイゴン」の舞台に上がれました。それは感動というよりも“ひとつの山を乗り越えられた”という自信になった気がします。

 術後、3日間の絶対沈黙の後、「声を出していいのは1日5分だけ」という期間が1週間あり、2週目は「1日1時間以内まで」に延びました。3週目からは制限がなくなって歌い始めましたが、舞台で歌う声になるまでは、地道な発声練習が続きました。声を使わなかったことで、喉の筋肉がすっかり衰えていたからです。

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