皮膚を科学する

肝臓や腎臓の病気で皮膚に「かゆみ」が表れるのはなぜ?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「便秘」「酒の飲み過ぎ」「寝不足」などで体調が悪いと、「肌が荒れる」といわれるが本当なのか。「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」(東京)の藤本智子院長が言う。

「寝不足や二日酔いなどは、単に洗顔やスキンケアをやらないで寝てしまうことで肌が荒れることはあるでしょう。ただ、便秘や胃腸の不調による一時的な栄養障害が、すぐに肌に悪影響を及ぼすということは科学的には証明されていません」

 ただし、肝臓や腎臓の病気が進行すると、皮膚に「かゆみ」「乾燥」「色素沈着」などの変化が表れるという。特に肝炎や肝硬変の人、人工透析をしている人は皮膚に強いかゆみが出ることが知られている。

「肝臓や腎臓は血液中の悪い物質を取り除く働きをする臓器なので、機能が低下するとヒスタミンなどの“かゆみ物質”が除去できずに増えてしまうのです。それに脳内のかゆみ制御のメカニズム異常が起こることも指摘されています」

 脳のかゆみ制御には、体内の「オピオイドペプチド」と呼ばれるモルヒネに似た物質が関係する。その物質には複数の種類があるが、かゆみを起こす「ベータエンドルフィン」と、かゆみを抑える「ダイノルフィン」がバランスを保っていれば、かゆみは出ない。ところが肝臓病や腎臓病があると、ベータエンドルフィンが増えてしまうのだ。

「中枢性のかゆみは皮膚の異常が原因のかゆみと違って、脳が直接刺激されて感じるかゆみなので全身がかゆくなり、かいても治まりません。抗ヒスタミン薬などの一般的なかゆみ止めは効きにくいので、治療では『k受容体作動薬』という薬が使われます」

 腎不全で透析を長い期間続けていると皮膚が黒くなる。これは皮膚を黒くするメラニンを作るホルモンが増え、色素沈着を起こす物質を排出できなくなるからだ。そして、急性肝炎や肝硬変が進むと皮膚や白目が黄色くなる。いわゆる「黄疸(おうだん)」だ。

「黄色くなるのは、血液から肝臓に運ばれて胆汁の成分になる『ビリルビン』の色です。ですから黄疸は、胆汁の流れが障害されるがんや胆石などの病気でも起こります」

 ちなみにミカンを食べ過ぎると、手のひらや足の裏の皮膚が黄色くなるが、それは病気ではない。蜜柑(みつかん)に多く含まれる「ベータカロテン」を大量に食べることで起こる「柑皮症」という現象だ。ニンジン、パセリ、カボチャ、あんず、海苔などを食べ過ぎても起こるという。

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