■それでも拡張型心筋症の治療は進歩している
術後の一時期は左心室の収縮が改善されるものの再び悪化するケースが多く、バチスタ博士が始めた頃は4割くらいの患者さんが術中術後に死亡しています。日本での症例を見ても、本来はバチスタ手術が必要ではない状態だった患者さんを除けば、ほぼ全員が手術後3年もせずに亡くなっています。私も2人ほどバチスタ手術を経験しましたが、どちらの患者さんも術後1年半ほどで亡くしてしまいました。
心臓移植しか残された道がない患者さんにとって最後の希望ともなり得るドラマチックな術式なので話題になりましたが、拡張型心筋症を完治させるような決定的な治療ではなかったということです。あくまでも、心臓移植までの“つなぎ”としての延命治療だといえるでしょう。
ただ、こうした歴史の中で、新たな治療法も進歩しています。薬物治療がそのひとつです。心臓の働きを弱めて血圧を下げるβ遮断薬を使って、拡張型心筋症の症状をコントロールできるケースがあることがわかってきました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」