数字が語る医療の真実

「根拠に基づく医療」の授業は臨床医が行うべきではないか

 私自身もいくつかの医学部と薬学部でEBMに関する講義を行っています。

 とはいえ、まだ問題はあります。医学部でのEBMの講義の大部分は、内科や外科などの臨床医によって行われることは少なく、公衆衛生の分野の臨床医でない人たちに委ねられている場合が多いのが現状です。

 論理による証拠だけでなく、事実による証拠に基づく医学教育が、公衆衛生の医師でなく、臨床医の手によって行われ、臨床医学全体に、さらに深く、広くEBMが浸透していくには、まだまだ時間がかかりそうです。そのためにこそ、かっけ論争はすべての医学生が学ぶべき内容だと思うのです。

 そしてまた、論理が優先される医学においては、論理に合わない事実を前にすると思考が停止し、下手をすればその事実を無視してしまいかねない危険をはらんでいる。それを、患者さんとなる読者の方たちも知っておいて欲しいのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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