がんと向き合い生きていく

多発性骨髄腫には治療をせずに経過観察で済むタイプがある

佐々木常夫氏(C)日刊ゲンダイ

 Yさんは、担当医から「骨が折れそうな箇所がたくさんあります。注意して動くように」と言われました。しかし、入院の翌日に、その不安が的中してしまいます。朝食を食べようとして起き上がる際、右手をつくと激痛があり、かばって左手をついたら左手にも痛みが走ったのです。両腕の「病的骨折」(溶骨したところの骨折)でした。

 Yさんは両前腕を固定しながら、化学療法と放射線治療を受けました。5カ月ほどの入院治療によって病状は改善し、腰痛も減少、Mタンパク量の減少を認め、輸血によって貧血も改善したことで、その後は外来での治療となりました。

 しばらく病状は安定していましたが、3年後に再びMタンパク量が増え、帯状疱疹、発熱などで入退院を繰り返しました。そして診断から約4年後、両側の肺炎を合併して残念ながら亡くなられました。

■発病の年齢にはバラつきが

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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