若くしてコレステロールが高ければ「家族性」を疑う

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 5年ぶりに改訂された動脈硬化性疾患予防のガイドラインで、「冠動脈疾患二次予防」の目標値が従来より低く設定されている。専門家に話を聞いた。

 冠動脈疾患とは、心臓を取り囲む血管(冠動脈)の動脈硬化が原因で発症する狭心症や心筋梗塞などだ。

 冠動脈疾患を一度発症すれば、LDLコレステロールをはじめとする再発予防(二次予防)のための目標値はより厳しくなる。ちなみにLDLコレステロールはいわゆる「悪玉コレステロール」で、動脈硬化の進行と密接な関係にある。

 これまでは100(㎎/デシリットル)未満が目標値だった。それが今回から「70未満」が加わった。対象は、「家族性高コレステロール血症」「急性冠症候群(不安定狭心症など)」「末梢動脈疾患や慢性腎臓病、メタボ、喫煙、主要危険因子の重複などを合併する糖尿病」。

 注目すべきは、家族性高コレステロール血症だ。

「専門医を除けば、家族性高コレステロール血症の診察がまだ十分ではない。見落とされている患者は多いでしょう」

 こう指摘するのは、帝京大学臨床研究センター長の寺本民生医師だ。

■新薬投与で「悪玉」を積極的に下げる

 家族性高コレステロール血症は生まれつきの疾患だ。肝臓の細胞表面にあるタンパク質「LDL受容体」の遺伝子やそれに関連する遺伝子(PCSK9やアポB―100)に異常がある。

 そのため血液中のLDLコレステロールが細胞内に取り込まれず、血液中にたまりやすくなる。「生まれつき総コレステロールの値が高い」「30代など若い年代で冠動脈疾患を発症している」などが家族性高コレステロール血症の特徴だ。

「かつては500人に1人程度といわれていましたが、実際は想定以上に多く、250~260人に1人と考えられています」(寺本医師)

 家族性高コレステロール血症であれば、従来の治療薬スタチンを最大量用いてもLDLコレステロールを目標値以下にするのが難しいケースが珍しくない。

「今回のガイドラインでは、スタチンで下がらなければエゼチミブという薬を使う。それでも駄目ならPCSK9阻害薬を使う。家族性高コレステロール血症を見落とされている患者は、その適切な治療を受けられていない」(寺本医師)

 PCSK9阻害薬は昨年承認の新薬で、スタチンとは違う機序を持つ。若いうちから高コレステロールを指摘されている人、若年で冠動脈疾患を発症した人は一度は動脈硬化の専門医のチェックを受けるべきだ。

 また、両親あるいは親のどちらかが家族性高コレステロール血症であれば、確率は高くなる。「親が若くして冠動脈疾患」という情報も、家族性高コレステロール血症を疑うポイントになる。

 今回「70未満」というこれまでより厳格な目標値が設定されたのは、LDLコレステロールに関して「the lower the better(低ければ低いほど良い)」ことが複数の研究ではっきりしているからだ。特に冠動脈疾患の二次予防は、これなしでは回避は難しい。

「低すぎても問題ありません。LDL受容体に関連するPCSK9の分泌が行われないことが原因で、赤ん坊より低いLDLコレステロール14以下の女性が、血圧、肝機能、腎機能が全く正常な健康体であることも報告されています」(寺本医師)

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