独白 愉快な“病人”たち

元クリスタルキング田中昌之さん 心筋梗塞が人生の転機に

退院後は100メートル歩くのもやっとだった(C)日刊ゲンダイ

 たばこをやめたのは長生きしたいからではなく、入院中の自分の姿があまりにみじめだったからです。自分じゃ何もできないから仕方ないんですけど、“そこは自分でします”というところまで看護師さんがやってくれるでしょう? あんなみじめな思いは二度としたくない(笑い)。

 退院後は体力のなさに愕然としました。散歩をしようと外に出たけれど、家からたった100メートルで息が上がってしまってそれ以上歩けない。冷や汗をかきながら休み休み30分もかけて家まで戻った時は、さすがにへこみました。でも「ここで負けたらロックンローラーじゃない」と自分を奮い立たせて、翌日は100メートルプラス1歩、その次はプラス2歩と、少しずつ距離を延ばしました。5日目ぐらいに突然タガが外れたように何キロも歩けるようになって、歩き過ぎてタクシーで帰ってきたりもしました(笑い)。

 振り返れば10代から“人嫌い”で、デビュー後もあまり人を寄せつけませんでした。でも震災があり、病気があり、すっかり“人好き”になりました。去年は故郷の伊万里市の観光大使になったんです。何十年かぶりに同窓会にも呼ばれたし(笑い)。プラスマイナスゼロの人生になるように、だんだん“いい人”になってきました。

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