皮膚を科学する

日焼けをするとなぜ黒くなるのか? 皮膚科医に聞いた

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「日焼け」は太陽光(紫外線)による皮膚のやけど。なぜ、赤くなった肌の色がだんだん黒くなるのか。「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」(東京)の藤本智子院長は、「皮膚が紫外線からDNA(遺伝子)を守ろうとする防御反応」と言う。

「強い紫外線は皮膚の細胞のDNAに障害を与え、発がんの原因になります。それを防ぐために皮膚は『メラニン』という顆粒状の色素物質をどんどん作り出し、有害な紫外線を吸収したり拡散させたりするのです。黒くなるのは、そのメラニンの色素の色です」

 皮膚でもメラニンが作られるのは、体の表面を覆う厚さ約0.2ミリの「表皮」の部分。表皮は一番下から「基底層」「有棘(ゆうきょく)層」「顆粒層」「角質層」とあり、メラニンは基底層で作られる。

「表皮は最下層の基底細胞が分裂し、成熟に伴い上の層へ移行していきます。この基底細胞の約10個に1個の割合で、メラニンを作る『メラノサイト(色素細胞)』が存在しています。そして、メラノサイトは紫外線の刺激を受けると、木が枝を広げるように多くの触手を伸ばして、周囲の細胞にメラニンを渡すのです」

 メラノサイトは加齢とともに機能が低下し、数が減少するが、もともとの数は人によって違いはないという。

 では、日焼けして黒くなる人とならない人がいるのはなぜなのか。特に色白の肌の人は、すぐ赤くなるが、その後は黒くならない人が多い。

「人に見られるメラニンは黒色の『ユーメラニン』と黄色の『フェオメラニン』の2種類があります。そして、そのどちらの比率が多いかによって、個々に皮膚や髪の色に違いが出ます。ですから、急激に黒くなる人はユーメラニンの割合が多い、黒くならない人はフェオメラニンの割合が多いのです」

 人種による肌の色の違いも同じメカニズム。白人のメラニンにはフェオメラニンが多く含まれ、黒人はユーメラニンが多いとされている。日本人などの黄色人種は、その混合タイプだ。それに黄色人種や白色人種のメラニンは表皮の深い層にだけあるが、黒色人種のメラニンは顆粒が大きく、表皮全体にわたって存在するという。

「黒色人種の肌の黒さは進化の過程でもたらされたもので、確かに紫外線による皮膚がんは起こりにくい。しかし、だからといって黄色人種の私たちが日焼けをして黒くなっても、本末転倒で逆に危ない。色白の人ほど紫外線対策が大切です」

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