天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高齢化で複雑になる緊急手術に備えて実践していること

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 こうした報告を見聞きしたこともあり、これまでよりも積極的に緊急手術に関わることに決めました。緊急手術が入ればいつでも呼んでもらって、サポートするチームと一緒に臨むようにしたのです。そのためには、しっかりした準備が必要になります。お酒をやめたのも、いつでも緊急手術に対応できるようにするためです。

 それまで、私が緊急手術に携わるのは1カ月で1回あるかないかくらいでしたが、今は多い時で週に1回、平均すると1カ月に2~3回ほど関わるようになりました。

 若手医師たちの間にも「いつでも天野を呼べる」という余裕が生まれ、緊急手術に対するチーム全体の対応が非常にスムーズになりました。それに伴って、当院の緊急手術の成績もよくなっています。

 緊急手術ですから、当然、夜間に入ることもあります。その場合、そのまま通しで翌日の昼間も勤務するというわけにはいきませんから、定時の勤務は若い世代の医師に任せることになります。時間外の手術が増えることで苦労も増えたのではないかと思うかもしれませんが、何より患者さんのプラスになりますし、自分の満足度も高いので苦ではありません。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事