Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

データが実証 高齢がん患者は「治療なし」も選択肢

2015年4月に肺がんで亡くなった俳優・愛川欽也さん(C)日刊ゲンダイ

 俳優の愛川欽也さんは2年前の4月、肺がんで亡くなりました。80歳でした。その前年の12月にがんが見つかったときには末期で、入院を必要とする治療を拒否。通院で受けられる放射線のみにとどめたのは、長寿番組への出演を切望したためと報道されました。愛川さんのケースは必ずしも「治療なし」ではありませんが、その根底にある考え方は共通します。よりよい生き方、自分が望む最期を全うするために、「治療なし」や「最小限の治療」を選択するのです。

 実際、国立がん研究センターの調査では、ステージ4の肺がんの場合、75歳未満だと抗がん剤治療を受けた方が有意に長生きでしたが、75歳以上では延命効果が認められませんでした。75歳以上の対象者は19人と少ないため、科学的に判断するには大規模調査が必要ですが、愛川さんのケースも加味すれば参考になるでしょう。

 特に前立腺がんと甲状腺がんでは、「治療なし」がモノをいいます。前立腺がんは悪性度が低いタイプが少なくなく、ガイドラインにも治療せず経過観察する「監視療法」が明記されているほど。1センチ以下の甲状腺がんも同様の考え方があります。そういう微小な甲状腺がんでリンパ節を取っても取らなくても再発率が変わらないことが分かっています。そして、「迷ったら積極的な方法をとらない」が医療の原則だと思っています。全ての治療にはマイナスの面もあるからです。

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中川恵一

1960年生まれ。東大医学部医学科卒業。同院緩和ケア診療部長を兼務。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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