「遺伝性乳がん・卵巣がん」対策を阻む日本人の家意識

欧米より20年の遅れ(C)日刊ゲンダイ

「日本には『家』の意識が強く、家のあり方と遺伝のネガティブな考え方がつながっているのでしょう。太宰さんによれば、乳がん患者会には多くの会社の協賛が得られているのに、『遺伝性』となると協賛をことごとく断られるそうです」

 HBOCの対策が遅れている理由はもうひとつある。健康保険の問題だ。遺伝子検査、予防切除は全て保険適用外。遺伝子検査は25万円かかる。

「だから日本人の遺伝データが集まらない。予防切除の普及には保険適用が必要になりますが、それには日本人の遺伝データが必要で、遺伝データを収集するには検査費用を下げなくてはならない。そして、それには保険適用が必要……と堂々巡りに陥っているのです」

 加えて、予防切除後の再建手術の技術が進む英国に対し、日本では高い技術を持つ専門医は少ない。美しい再建が望めないなら予防切除をやろうという気には、大半の女性はならないだろう。

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