年をとったら「太る」を目指す

痩身高齢者には寝る前の甘い飲み物や高カロリーおやつが吉

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 地方都市に住む70代の女性は数年前に夫を亡くして以降、自分が食べるためにおかずを何品も作ることが面倒に思え、ご飯と作り置きの煮物1品だけで済ませることが増えた。

 食べる回数も減った。一人暮らしでは1日に出る洗濯物はわずかで、部屋はそう汚れない。買い物に行く回数は減り、行くとしても田舎暮らしのため車での移動が日常的だ。つまり活動量が減った分、お腹がすかなくなったのだ。

 一人では食事も楽しくないし、「口うるさく言う人がいなくなったんだから、1日3食決まりきったように食べなくても」という気持ちもある。今の生活になってから、かなり痩せた――。

 これはある実例だが、ほとんどの人が容易に思い浮かべられる一般的なケースだろう。しかし、寝たきりにならず健康的に過ごしたいなら、避けなければならない生活スタイルだ。

「痩せないためには、意識して摂取エネルギーを増やす必要があります」

 おかずを何品も作らなくてもいい。揚げ物や脂身たっぷりの肉をガッツリ食べる、というのも、その習慣がない高齢者には難しいだろう。たとえば、おやつタイムを取り入れ、菓子類を食べる。食事と食事の間にチーズやチョコレート、ヨーグルトなどを食べる。寝る前にハチミツ入りの牛乳を飲む。無糖の飲み物より砂糖入りを選ぶ。

「糖尿病などで食事制限を受けている方は別にして、いわゆる“規則正しい食生活”にとらわれ過ぎない。外出機会を増やして、こまめにエネルギーを摂取してください」

 冒頭の女性の場合、近所の喫茶店に通うようになって変化が起こった。茶飲み友達ができ、おかずの交換をしたり一緒に食事したりするようになったのだ。外に出かけ、おしゃべりをして笑っていれば、食欲が湧いてくる。落ちた体重も1年ほどで元に戻った。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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