道端アンジェリカさん告白「乾癬」 “飲む治療薬”の実力は

乾癬を告白した道端アンジェリカさん(左)
乾癬を告白した道端アンジェリカさん(左)/(C)日刊ゲンダイ

 モデルの道端アンジェリカさんの告白で注目される乾癬(かんせん)。慢性の皮膚疾患で尋常性乾癬、乾癬性関節炎、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬などのタイプがある。主な症状は「紅斑(赤く盛り上がる)」「鱗屑(銀白色のカサブタで覆われる)」「落屑(カサブタがはがれ落ちる)」。爪乾癬、頭皮乾癬も多い。その乾癬の新しい内服薬が今年3月、25年ぶりに発売された。NTT東日本関東病院皮膚科・五十嵐敦之部長に聞いた。

 今回の新薬「PDE4阻害薬(薬剤名『アプレミラスト』)」の最大のメリットは“使いやすさ”だ。

 今までの治療は、軽症なら塗り薬、効かなければ内服薬「エトレチナート」(1985年発売)や「シクロスポリン」(1992年発売)。それらが効かなければ生物学的製剤の投与となった。

 ところが25年前から使われるシクロスポリンは腎機能障害などの副作用がある。同時に行う治療として紫外線を照射する光線療法もあるが、シクロスポリンではNG。

 また、内服薬の次の治療、生物学的製剤は非常に効果が高いものの、「高額」「主に注射」「重篤な副作用のリスク」「厳しい基準をクリアした承認施設でのみ可能」といった“使いにくい要素”が多かった。

「一方、新薬は臓器障害が少なく、腎機能や肝機能などのモニタリング検査が原則必須ではありません。承認施設の設定がなく、一般開業医でも処方可能。内服薬なので、注射が苦手でも問題ない。光線療法との同時併用もできます」

 つまり、生物学的製剤へ進む前の治療として期待が持てる薬なのだ。

 ただし、新薬は「どういう患者によく効き、どういう患者に効きづらいのか」がはっきりわかっていない。皮膚症状が改善するには早くても4週間前後かかるが、16週間を過ぎても効果が得られず、24週目でようやく改善した人もいる。

「効く・効かないが予見できるようになれば薬の利便性が増すでしょう。現段階では薬の効果を確認するためには24週目までの服用が望ましい」

■新薬への急な切り替えは要注意

 五十嵐部長は新薬が適する患者として「塗り薬で効果が得られない」「ほかの内服薬で副作用が出る、あるいは心配される」「注射に抵抗感を持つ」などを挙げる。

 さらに「痒みがある」「肥満」の患者にも適している。痒みは服薬後早い段階で治まり、肥満でも効き目が変わらないからだ。生物学的製剤は、高体重が効き目に影響を与えることがある。

 すでに使っている薬(塗り薬または内服薬)から新薬に切り替える場合、シクロスポリンに関してはある程度オーバーラップが必要。急に切り替えて症状が一時的に悪化した例の報告がある。

「米国では数週間かけてシクロスポリンを徐々に減らし、中止する方法をとっています」

 生物学的製剤からの切り替えは、選択肢としては「あり」。しかし、症状が落ち着いているのにあえて別の薬に替えるケースはほぼない。

 かつて、乾癬は皮膚症状や関節症状は深刻だが「死なない病気」と考えられてきた。その後の研究で、乾癬は全身疾患であり、心筋梗塞のリスクを上げることが明らかになってきた。乾癬治療薬のうち「心筋梗塞のリスクを下げる」と疫学調査ではっきりとわかっているのは生物学的製剤のひとつである抗TNF―α抗体のみ。新薬についてはまだデータはないが、「可能性は期待できる」とみる専門家もいる。

<新薬の作用機序>
 従来の内服薬とは異なる。酵素PDE4を阻害し、炎症性サイトカインなどの産生を調節。過剰な炎症反応を抑制する。下痢や頭痛などの副作用のリスクが指摘されている。

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