死因はがんに続き2位 ホントは怖い糖尿病の感染症

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今日は世界糖尿病デー。各地で糖尿病に関するさまざまなイベントが行われ、糖尿病への関心が高まる日だ。糖尿病の怖さは網膜症や神経・腎障害の3大合併症で語られることが多いが、身近な感染症を侮ってはいけない。日本糖尿病学会の調査によると感染症はがんに次ぐ第2位の糖尿病患者の死因。しかも、感染症による炎症が脳梗塞や心筋梗塞、がんなどを起こしている可能性が強い。糖尿病治療専門医で「AGE牧田クリニック」(東京・銀座)の牧田善二院長に聞いた。

 糖尿病になると風邪やインフルエンザ、水虫などあらゆる感染症にかかりやすくなる。

 急速に重症化することも多く、回復には時間がかかる。その間、血糖値が普段以上に上昇するので、糖尿病そのものも悪くなる。

「高血糖になると、好中球と呼ばれる白血球成分の機能が低下し、体内に侵入したウイルスや細菌を貪食する働きが低下するからです。また、細い血管の血流が悪くなるため、酸素や栄養が十分行き渡らず、細胞の働きが低下する。白血球も感染源に到達しづらくなります。薬も流れにくくなるので、その効果も弱くなるのです」

 さらに痛みを感じる神経が障害されるため感染症対策が遅れ、重症化しやすい。インスリンを効きにくくするサイトカインなどが多く産生されるため、血糖値が高くなり、普段より感染症を進行させやすくなるという悪循環にも陥る。

「糖尿病の人が、とくに注意しなければならないのは、切断につながる足の感染症のほか、『尿路感染症』『上気道炎、肺炎、結核』『歯周病』『胆のう炎』などです。『尿路感染症』は女性に多い感染症で、尿道から感染し、膀胱炎、腎盂炎、腎盂腎炎と重症化していきます。陰部のかゆみや排尿痛、残尿感、頻尿、尿の濁りなどの特徴があり、腎盂炎などが重症化すると腰痛、発熱が起こります」

■もっと敏感になるべき

 糖尿病の悪化で神経障害が出ている人は、より尿路感染症のリスクが高くなる。健康な人は排尿後、膀胱内はいったん空になるが、自律神経障害があると尿意をもよおさなかったり、排尿時に膀胱が十分収縮しない。その結果、膀胱内に常に尿が残った状態になる。

「同じ理由で、胆のう炎も発症しやすくなります。自律神経障害で胆のうの収縮が不十分になると、胆のう内に胆汁が残る。そこに細菌などが繁殖するからです」

 上気道炎は鼻や喉の炎症。いわゆる風邪のことで、重症化すると、気管支炎や肺炎などを引き起こす。

「インフルエンザで亡くなる人は年間1万人以上います。その中に糖尿病の人も多く含まれている。また、結核は過去の病気と思っている人もおられるでしょうが、発症せず本人も気がついていないだけで保菌者はいると考えられます」

 歯周病は口の中の常在菌が歯ぐきなどに取りついて起こる慢性感染症。歯槽骨を溶かして歯を失う原因だが、最近の研究では心臓病の原因のひとつともいわれている。

「糖尿病の人は感染症にもっと敏感になるべきです。糖尿病の重大な合併症の多くが感染症による炎症が原因の可能性があるからです」

 実際、最新の研究では長期間、体内でくすぶり続ける「慢性炎症」が、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす動脈硬化症やがん、免疫疾患といったさまざまな病気に共通する基盤病態となっていることが分かりつつある。

「かつて、動脈硬化は肉など脂っこいものを多く食べることで血管内に脂質が沈着して起きると言われてきました。ところが、血液内の脂質量を減らしても思うように脳梗塞や心筋梗塞が減少しない。しかも、これらの病気を発症した人からクラミジア、歯周病菌、ピロリ菌など慢性炎症を起こす病気を抱えている人が多かったことなどから、『動脈硬化炎症説』が注目されているのです」

 がんも、感染症との関係が明らかになりつつある。

 胃がんがピロリ菌、子宮頚がんがヒトパピローマウイルス、肝がんが肝炎ウイルスに感染することで発症することが分かったからだ。

「がんはがん抑制遺伝子などの遺伝子変異があってはじめてがん化するが、慢性炎症により、転写因子や遺伝子の発現誘導といった分子機構の変化が起こりやすくなることが分かっています」

 糖尿病患者とその予備群は健康な人以上に十分な睡眠とバランスのとれた食事で感染症に負けない体をつくることだ。

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