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難病SMAに初の治療薬「スピンラザ」は1本932万円

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今年8月、乳児型脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する超高額薬剤「スピンラザ」が保険適用となりました。SMAは日本では難病に指定されていて、患者数は10万人に0.5~1人といわれています。脊髄にある運動のために使う筋肉をコントロールする神経に影響を及ぼす病気で、筋力の低下や筋萎縮が表れるため、飲み込んだり噛んだりする力や呼吸など生命維持のために欠かせない身体機能に障害が起こり、重篤な状態を招いてしまいます。

 まだ根本治療が確立していないため、初の治療薬となるスピンラザは、SMA患者にとって今のところ“最後の切り札”といえる薬です。核酸製剤に分類される全く新しいタイプの薬で、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」と呼ばれる人工核酸医薬です。

 核酸とは、DNAやRNAといった「遺伝子」の本体にあたる物質です。人の体は約37兆個の細胞でできていて、その細胞一つ一つの核に存在する染色体にDNAは含まれています。

 DNAは62億(31億セット)の「塩基」と呼ばれる分子が対をなして二重らせん構造で存在し、DNAをもとに作られた約2万3000の遺伝子によって、生命が維持されています。

 病気は遺伝子の量や質が変わることによって起こり、SMAは「SMN1」という1つの遺伝子の異常によって発症します。言い換えれば、SMAの原因遺伝子=SMN1遺伝子ということです。スピンラザは、原因遺伝子であるSMN1の機能を補う全く新しいタイプの薬なのです。

 ただ、難点といえるのが薬の価格です。「932万円/本」(米国では約1500万円/本)と超高額で、最初の1カ月(3回投与)にかかる薬剤費は約3000万円、負荷投与後は4カ月間隔で約1000万円をずっと使い続けなければなりません。保険適用によって患者の自己負担は大幅に抑えられますが、差額は国民が負担する医療保険料や税金から支払われます。もちろん、命はお金には代えられません。だからこそ、こうした超高額薬剤は適正に使用するべきで、しっかり議論する課題であるといえます。

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