天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

外科医にとって「自己管理」は不可欠な適性といえる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 医学部の定員が増えたのは、医師の数が足りないからです。地域偏在の問題もあって、地方は医師が少ないため一人一人の仕事が増えて忙しい。都市部は医師の数は多くても、先進的で高度な医療が次々に行われることで忙しい。結果的に地方も都市部も医者が足りないというのが現状なのです。

 そうした状況の中に、明確な志望動機を持たずに漠然とした考えで医師になった若者が飛び込んでくると、多忙な“流れ”に巻き込まれてしまいます。わけがわからないまま自己管理ができずに流され、場合によっては過労死してしまったり、自ら命を絶ってしまう悲劇が起こってしまうのです。

 プロスポーツの世界でも、まれに選手が突然死してしまうケースが起こります。

 ただ、その多くは大相撲なら十両や幕下、プロ野球やプロサッカーなら控えの選手で、幕内力士やレギュラークラスの選手はほとんど見当たりません。プロのトップクラスの選手たちは、自分の体力や健康についてきちんと把握しながら練習や試合に臨んでいます。自分がその負荷に耐えられるかどうか、しっかり適性をチェックしながら取り組んでいるから、最悪の事態に至ることが少ないのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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