年をとったら「太る」を目指す

一見すると肥満でも サルコペニアやフレイルの可能性あり

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 超高齢社会の今、積極的な対策が求められているのが、「サルコペニア」と「フレイル(虚弱)」だ。

 サルコペニアはギリシャ語の「サルコ(筋肉の意味)」と「ペニア(喪失の意味)」を組み合わせた言葉で、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態。一方、フレイルは、体の予備機能が低下して健康障害を起こしやすくなった状態で、介護が必要となる前の段階だ。フレイルの最も重要な要因が、サルコペニアである。

「サルコペニア、フレイルともに認知が不十分な上、該当する人の多くが自覚していません。ガリガリに痩せていたり、見るからに健康状態が悪かったりする人だけとは限らず、ふっくらした体形の『一見したところ肥満』という人もいます」

 つまり、見た目と実際は異なるのだ。“一見肥満”の人は、実は“むくみ”の可能性もある。もしそうなら、心不全、腎不全、肝不全、内分泌の異常など原因を突き止め、治療を行わなければならない。

 また、脂肪は多いが、筋肉量が少ない低栄養状態の可能性もある。これが続けば、筋力や活力が低下する。すると身体機能の低下から活動度の低下を招き、食欲が落ち、結果的に摂取量も落ちる。低栄養は一層ひどくなり、サルコペニアが進むという「フレイルの悪循環」が起こる。

 70代、80代でも「高齢者」という言葉を当てはめづらいほど元気な人はいる。しかし高齢者では、一度はフレイルのリスクはないか調べた方がよい。

「フレイルのチェックは、老年科、総合診療科、総合内科などで行われます。生活機能全般、運動機能、栄養状態、口腔機能、閉じこもり、認知症、うつの25項目で構成される基本チェックリストで8項目以上に該当する場合には、フレイルの可能性が高いです」

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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