がんと向き合い生きていく

甲状腺がんでの放射性ヨード内服治療は隔離して行われる

都立駒込病院の佐々木常雄名誉院長(C)日刊ゲンダイ

 福島原発事故では、大気中に放射性ヨウ素が放出されました。これが体内に吸収されて甲状腺がんを引き起こすことも心配されています。いろいろな議論がされていますが、5~9年程度の潜伏期間を経て、がんが増えることも考えられ、今後も注意深く見ていく必要があると思います。

 甲状腺がんの罹患数は全体で人口10万人当たり約10人。女性に多く(男性の約3倍)、30歳から増加して60歳代がピークです。死亡者数は全がん死亡者の約1%未満です。

 甲状腺がんの多くが前頚部のしこりとして発見され、大きくなると、気管や食道の圧迫などによる首の違和感、息苦しさ、食事ののみ込みが悪くなったりします。

 治療はまず手術が行われます。病理組織では「乳頭がん」「濾胞がん」「髄様がん」「未分化がん」に分けられます。乳頭がんが最も多く約90%を占め、進行は非常に緩徐で、Ⅰ期、Ⅱ期なら手術でほとんどが完治します。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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