独白 愉快な“病人”たち

異変は突然 藤崎奈々子「チョコレート嚢胞」摘出手術語る

15年5月に手術を受けた
15年5月に手術を受けた(C)日刊ゲンダイ

 手術のとき、10、9、8……と数えた辺りで世界が揺れて、「すごい!ホントだ!」なんて思った瞬間にブチッと意識が切れました。そして、パチパチと頬を叩かれて起こされたのです。すごいですよね、全身麻酔って(笑い)。

 事前に経験者から話は聞いていたんです。「3、2、1でいきなり無になる」って。「なにそれ?」と思って楽しみで仕方ありませんでした。

 手術を受けたのは、2015年5月下旬。病名は「チョコレート嚢胞」です。卵巣に子宮内膜に似た組織ができて、卵巣の中に嚢胞(液体を含んだ袋状のもの)ができてしまう子宮内膜症の一種です。月経に伴って卵巣に少しずつ血液がたまって大きくなり、月経痛や不妊に関係するほか、悪性化する可能性もある病気だそうです。

■ロケ先の朝食中「死を感じるレベルの腹痛」に襲われる

 チョコレート嚢胞があることは、手術をする3年ほど前から分かっていました。健診でPET―CT検査を受けたときに見つかっていたんです。でもそのときは「小さいから大丈夫。定期的に検査すれば」と言われ、「気にしなくていいんだな」という認識でした。

 そして2015年2月、異変は沖縄で突然やってきました。2日間の街ぶら番組のロケがあり、前日に沖縄入りした翌朝です。スタッフと朝食を食べたらすぐに撮影スタートというスケジュールだったのですが、その朝食の最中に、急にお腹が痛くなりました。それも「死を感じるレベルの腹痛」でした。

 すぐさまトイレに駆け込んでうずくまったが最後、痛すぎて動けないまま嘔吐していました。人間って、痛すぎると痛いのかどうかも分からなくなるんですね(笑い)。あとでメークさんやマネジャーに聞くと、顔面は血の気が引いて真っ青で、唇は紫、汗も出ていたそうです。

 あと20分でロケ開始だったので、痛み止めの薬をもらってなんとか立ち上がり、撮影に臨みました。スタッフさんや一緒にロケを回る俳優さんにもご協力いただきながら、2日間のロケはやり切りました。そのときの薬は、飲みすぎると胃に穴が開くような強いもので、それを規定量以上に飲みました。倒れて意識がなくなってしまったら仕方ないけれど、「意識があるうちはやる」と決めていました。

■「あれだけ痛い思いをするくらいなら、さっさと取ってしまいたい」

 ロケを終えたあと最終の飛行機で羽田に着き、その足でマネジャーと救急病院へ行くと即入院になりました。初めは押して痛い場所から「盲腸」を疑われましたが、翌朝になって医師から「婦人科系の病気の経験は?」と聞かれ、チョコレート嚢胞のことを伝えたことで婦人科での検査となり、病名が判明しました。「チョコレート嚢胞が腫れて、手術レベルの大きさに達している」との診断でした。

「あれだけ痛い思いをするくらいなら、さっさと取ってしまいたい」というのが私の率直な思いでした。医師からは「もし卵巣が腸にひどく癒着していたら、腸ごと切るので一時的に人工肛門になる可能性もある」と説明されましたが、それでも「あの激痛がなくなるのなら仕方ない」と思いました。結局、癒着はほとんどなく、嚢胞の摘出が完了。1週間弱で退院できました。腹腔鏡手術だったので、今はよく見ないと分からないくらい小さい傷ですけど、術後はやっぱり痛かったですよ。

 入院中、一番嫌だったのは尿管です。術後すぐには歩けないので仕方ないのですが、トイレに行きたい感じがずっとあって、すごく気持ちが悪いんです。早く外してほしくて、翌朝には無理をして歩きました。外してもらえたときはスッキリとした気分でした。

 それ以外はとても快適で、食欲も全く落ちませんでした。普通は「全身麻酔の後は何日も気持ちが悪いもの」らしいのですが、私は、術後初のおかゆを8割ぐらい食べたんです。自分では「残しちゃって悪いな」と思ったんですけど、「こんなに食べた人はいない」と看護師さんに褒められました(笑い)。

 1週間弱の短い入院でしたが、友達のお見舞いもうれしかったし、ブログにアップした写真を見た読者から「勇気がもらえた」という書き込みをたくさんいただけたのもうれしかったですね。ストレッチャーに乗せられて笑顔で手術室へ向かうときの写真に反響をいただきました(笑い)。

 再発しやすい病気なので、朝晩薬を飲んで月経を止めています。飲むか飲まないかは本人の自由なんですけど、今後もずっと薬は飲むつもりです。

 不安になってもいいことはありません。いいことがあるならいくらでも落ち込みますけど、そうじゃない。だから「その時間で楽しいことを考えた方がいい」と思って、日々明るく生きています。

▽ふじさき・ななこ 1977年、北海道生まれ。短大在学中にタレント活動をスタートさせ、1997年、フジテレビビジュアルクイーン・オブ・ザ・イヤーに選出される。以後、CM、テレビ、ラジオ、雑誌などで活躍。整理収納アドバイザー1級とナチュラルダイエットマイスターの資格を持ち、現在、「ノンストップ!~いいものプレミアム~」(フジテレビ系)に準レギュラー出演している。

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