インフル感染リスクを下げる「マスク」の正しい使い方

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 日に日に寒さが増し、マスクを着用している人が増えてきた。風邪やインフルエンザなどの感染症を予防したいなら、正しい使い方をしないと逆効果になりかねない。

 外出時や人が多い職場では常にマスクを着用していたのに、インフルエンザに感染してしまった。そんな経験がある人は多いだろう。医療機関でも、マスクを着用しているスタッフや患者ばかりがインフルエンザに感染するというケースも起こっている。

 マスクは正しい使い方をしないと、逆にインフルエンザ感染のリスクを高めてしまうという。東邦大学名誉教授で平成横浜病院の東丸貴信総合健診センター長は言う。

「インフルエンザの主な感染経路は、①咳やくしゃみなどで飛び散ったウイルスを含んだ飛沫を吸い込むことで感染する『飛沫感染』と、②ウイルスが付着したつり革やドアノブなどに手を触れ、その手で目、鼻、口などを触って粘膜から感染する『接触感染』です。ウイルスそのものの大きさは直径が約0・1マイクロメートル程度で、一般的な不織布マスクの網目は通過してしまいます。しかし、ウイルスを含んだ飛沫はマスクを通過できないので、一定の効果があるといえるでしょう。ただし、マスクはあくまでも飛沫感染を防ぐためのもので、接触感染のリスクは残ります」

 インフルエンザにかかっている人が、咳、くしゃみ、会話などでまき散らすウイルスを含んだ飛沫は、自分の顔周辺に飛んでくるケースが多い。飛沫はマスクの表面に引っかかるが、ウイルスはそのまましばらく生き続けることができる。それだけ、マスクは汚染されやすいといっていい。汚染されたマスクを手で触り、そのまま目をこすったり、食事をしたりすれば感染リスクが高くなる。他のものに触れば、感染を拡大させてしまう可能性もあるのだ。

■手洗いとセットで感染リスク低下

 2006年から07年の冬、オーストラリアでマスクの有効性についての比較試験が行われた。子供がインフルエンザと診断された143家庭を対象に、家族が「医療用マスクをするグループ」、「N95相当のマスク(0・3マイクロメートル以上の微粒子を95%以上捕集できるマスク)をフィットテストをせずに使用するグループ」、「マスクを使用しないグループ」の3グループに分けて比較したところ、家族の感染率に有意な差は見られなかった。

 むしろ個人単位では、医療用マスクをしたグループ(約20%)の方が、使用しないグループ(約16%)よりも感染率が高かったという。

「米国で1437人を対象に行われた比較試験でも、マスクを単独で使用しても、マスクを使用しない場合と比べて感染率の低下は見られませんでした。ただ、『マスク着用と手洗い』を併用したグループは30~50%ほど感染率が低下しています。マスクだけでは防げない接触感染のリスクを下げるためには、ウイルスを物理的に洗い流す手洗いをセットで行う必要があるのです」

 マスクを着用する際は口と鼻をマスクでしっかり覆い、顔とマスクの間の隙間が最小限になるように装着する。マスクの表面には触らず、掛け外しはひもの部分を持つ。必ず使い捨てにして、使用済みのマスクはすぐに廃棄。そして、外出先から自宅や職場に戻った際、食事前は手を洗う。なるべくなら、不特定多数が触るものに触れた後も手洗いするのが望ましい。

 さらに、顔を触らないことも大切だ。米国で行われた調査では10人の対象者を観察したところ、最も多かった人は3時間で目を12回、唇を72回、鼻を20回も触っていた。平均でも目を7・4回、鼻を16回、唇を24回触っていたという。

「マスクを着用していても、人は無意識に顔のあちこちを触っているものです。顔に触る回数が多ければ、それだけ感染リスクもアップします。私も患者さんと接する機会が多いこともあり、意識して顔を触らないように心がけています」

 国立感染症研究所のホームページでも警告されているように、マスクは正しく着用し、しっかり手を洗い、顔を不必要に触らないようにする。中途半端に使って安心してはいけない。

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