VIPと病院の怪しい舞台裏

貴ノ岩は2通提出 診断書は患者の意向を沿って書けるのか

貴ノ岩は意外にも“策士”なのか
貴ノ岩は意外にも“策士”なのか(C)日刊ゲンダイ

 貴ノ岩を巡る暴行事件で、事態をややこしくしているのが、鳥取県警と相撲協会に提出された2枚の診断書だろう。渦中の被害者には、再入院説も浮上する。「このハゲー」と秘書を暴行しまくった元代議士も、トラブルが明らかになると、入院して姿を隠した。VIPと病院の舞台裏を探る――。

■虚偽の記載は犯罪だが…

 11月13日に協会に提出された診断書は、貴ノ岩が入院した済生会福岡総合病院の医師が作成した。「①脳震盪②左前頭部裂傷③右外耳道炎④右中頭蓋底骨折・髄液漏の疑い。全治2週間」と診断している。ところが、先月29日に県警に出された1通目には、④の記載がない。

 時系列を考えると、貴ノ岩側がコトを大きくするために、より大げさな診断書を用意したように見えなくもない。もしそうだとすれば、VIPな患者の意向をくんだ診断書を作成できるのか。聖路加国際病院内科名誉医長の西崎統氏が言う。

「診断書は、医師が診断したことを証明する文書で、虚偽の記載は犯罪になります。だから、ウソは書けませんが、VIPの意向に沿うように書くことはありえます。その一つが、がん。遺族が故人の病名を公にしたくない場合、たとえば肝臓がんを肝不全として死亡診断書に記入することがあるのです。そうすると、訃報欄の死因は肝不全になります」

 貴ノ岩は「頭を骨折したのではないか」と済生会福岡総合病院を受診して入院。CT検査などでハッキリしない“骨折の痕”があったことから④の「頭蓋底骨折・髄液漏の疑い」が記載されている。

「たとえば、腰痛で受診した人を検査して、骨にも筋肉にも臓器にも異常がないことはあります。逆に直接関係はないが、間接的に関係するかもしれない何かが見つかることも少なくない。そうすると、診断書は、『急性腰痛症の疑い』などになります」(西崎氏)

 貴ノ岩が単に「頭が痛い」というだけだと、“骨折疑いの診断書”にはならなかっただろう。“作戦勝ち”か。

■雲隠れ費用は1泊10万円

 今年2月には、京都府立医大の医師らが、暴力団関係者の病状について「刑事施設での拘禁に耐えられない」とする虚偽の診断書を作成。虚偽有印公文書作成・同行使容疑などで京都府警に強制捜査された。貴ノ岩のケースは、受診理由を検査して「疑い」としていることから、虚偽には至らないと考えられるそうだ。

 VIPを受け入れる部屋は、やはり特別だ。乳がんで亡くなった小林麻央が治療を受けたとされる病院の関係者が言う。

「一般の病棟は、診療科ごとに分かれていますが、それとは別にVIP病棟があります。一般病棟の個室の2倍の広さで、ベッドとトイレのほかにソファとテーブルがある。面会でVIP病棟に入れるのは患者が指定した人だけ。フロアと個室の入り口は、それぞれ暗証番号やカードキーでロックされます。VIPの個室は一般の2倍以上の1泊10万円です」

 最近は抗がん剤治療も通院で受けられる。点滴など簡単な治療は、VIP病棟で済ますという。セキュリティー万全で、3食つき、治療も受けられるなら、雲隠れ費用としては割安か。

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