年をとったら「太る」を目指す

餓死を招くケースも リハビリにおける栄養管理の重要性

栄養管理は大切(C)日刊ゲンダイ

 私はリハビリの訓練量を減らし、摂取エネルギーを増やしてもらうように主治医に依頼しました。ところが、「まずは太ってもらわなければ」と思った時点で、すでに時が遅かったのです。栄養状態を改善できないまま、その患者さんは餓死されました。栄養管理をきちんとしていれば、死ぬことがなかった患者さんでした。

 当時の私は、主治医か担当の管理栄養士の「誰か」が患者さんの栄養管理を的確にしていると考えていました。後に気付いたのは、主治医は脱水症状予防のための水と電解質の管理はしっかりやっているが、アミノ酸や脂質の摂取など、摂取エネルギーのことは、あまり念頭にないということでした。

 500ミリリットルの点滴1本は、平均すると100キロカロリーほど。これを高齢者では1日3本使いますから、禁食の場合、300キロカロリーほどしか摂取できていません。その状態でエネルギーを消費するリハビリを行い続ければ、餓死という最悪の結果を迎えるリスクがあると、その経験で痛感したのです

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若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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