全国の医師が処方した薬 ベスト10

【高脂血症薬】処方量は59歳までは男性が それ以降は逆転

肥満割合と相関する!?
肥満割合と相関する!?(C)日刊ゲンダイ

 高脂血症の総患者数は約206万人。男性が約60万人、女性が約146万人で、女性患者が圧倒的に多いという特徴を持っています。ただし、これは「主たる病気が高脂血症」の患者数の話。実際には糖尿病や高血圧、動脈硬化や脳梗塞など、より深刻な生活習慣病を抱えている患者の多くが高脂血症を合併しています。しかし、そのような患者のうち、何人が高脂血症のクスリを継続的に飲んでいるかは、明らかになっていません。

 ただ性別・年齢別の数字は公開されています。全年齢の総処方量は、男性が約21億8000万錠、女性が約27億9000万錠で、やはり女性のほうが多く処方されています。しかし、その差は高脂血症患者数ほどには開いていません。男性の生活習慣病患者の多くが高脂血症を合併しているからでしょう。
<表>は年齢・性別の処方量をまとめたものです。男女とも30代までの処方量は少なく、40代に入ってから処方量が増えてきます。しかし、40代前半で比較すると、男性の処方量が女性の3倍もあります。40代後半でも2.5倍以上の差です。

■肥満割合と相関する?

 高脂血症の主な原因は、言うまでもなく肥満です。現在の基準では、BMI値が25.0以上を肥満と呼んでいます。厚生労働省の「国民健康・栄養調査(2015年)」によれば、40代の肥満者の割合は、男性が36.5%、女性では18.8%。男性のほうが2倍も肥満が多いのです。しかし、40代をピークに、男性の肥満者の割合は低下していきます。逆に女性では40代を底に肥満者が増え続け、70代で男女互角(23.8%)になります。

 高脂血症治療薬の処方量は、男女とも年齢とともに増え続けますが、女性では肥満増加の影響を受けて、処方量も大きく増加し、60代前半で逆転、その後はずっと女性優位が続きます。処方量のピークは男性が60代後半、女性が70代前半になっています。その後は男女とも処方量が減ります。しかし男性の減少率のほうが大きいため、80歳以上で女性の処方量が男性の2倍になり、90歳以上では差が4倍以上に広がっています。男性の高脂血症を伴う生活習慣病患者の多くが80歳を前に亡くなってしまうからです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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