独白 愉快な“病人”たち

49歳で手術 川原みなみさん「腰椎すべり症」で体内にボルト4本

担当医師に背中を押され手術を決断
担当医師に背中を押され手術を決断(C)日刊ゲンダイ

 もともと腰痛持ちではあったのですが、まさか手術をしなければならないほどひどくなるとは、思っていませんでした。「腰椎すべり症」は、背骨の一部がズレて、背骨のすぐそばを通っている神経を圧迫してしまう病気です。医師には「70代以上の高齢者に多いんです。川原さんはまだ49歳ですよね」と大変珍しがられました。

■散歩の最中、お尻に痛みを感じるように……

 異変は3年ほど前でしょうか。東京から母のいる京都へ移り住み、フリーアナウンサーの仕事を減らして母の経営する和小物店を手伝う生活になりました。

 東京への未練や京都での暮らしに慣れるまでのストレスはありましたが、生活は穏やかで、母と散歩するのが唯一の運動でした。そんな暮らしを始めて半年ぐらい経った頃、散歩の最中にお尻に痛みを感じるようになったのです。筋肉痛のような痛みに「散歩しかしてないのに……」と思ったのを覚えています(笑い)。

 それが日を追うごとにだんだん範囲が広がってきて、腿から膝にかけて脚の裏側や側面も痛くなってきたのです。座っていればなんともないんですけどね。痛み始めて半年ぐらいで整形外科へ行ってみました。レントゲン検査の結果、「ひどくはないけれど、すべり症ですね。腰の背骨が前にズレている」と告げられ、腰を上下に引っ張る牽引のような治療を受けました。

 何度か通いましたが、一向に良くならないのでマッサージに通ったり、評判がいいと聞いた大阪の鍼灸院へ通ったりもしました。それでも良くならなかったので、初めの整形外科へ「全然良くなりません」と訴えました。でも、やはり治療は同じ牽引だけでした。

 そこで、京都で有名な整形外科へ行ったところ、やはり「腰椎すべり症」と診断されました。もっと正確にいえば、すべり症によって脊柱管狭窄を起こしているということでした。

 手術を勧められ、手術の日程も決めて帰ってきたのですが、1カ月待ちだったので、その間に念のためもうひとつ、京都屈指の病院へ行ってみました。MRI検査の結果、やはり診断は同様で手術を勧められました。ただ、前の病院では「神経の圧迫を取るだけの手術」だったのに対して、そこでは「ズレた骨を4本のボルトで動かないようにする固定術」を勧められました。私の場合、前にズレるだけではなくグラグラ動くちょっと厄介なすべり症だったようです。

「あなたの年齢では珍しい病気です。ボクの家族ならどうするかと考えてみました。それでもこの手術をボクは勧めます」

 医師にそう言われて、2015年7月末にその病院で手術を受けました。

■術後2~3日はベッドの上で「寝返りもダメ」

 腰にボルトが入り、コルセットでガチガチに固定され、3日間はすごい痛みでした。ボルトが体の中で動いてしまうと再手術になるらしく、2~3日はずっとベッドであおむけに寝たままでいないといけません。寝返りもダメで、それはそれはつらかったです。その後、トイレに歩き出す時も、ほんの数メートルなのに車椅子。起き上がる時も車椅子に移る時も、便座に座る際もドキドキでしたし痛みもありました。とにかく、背骨を曲げないことだけに集中した日々でした。

 リハビリを経て2週間で退院になりましたが、がっちりしたコルセットを装着したままの不自由な生活が続きました。術後はボルト固定された違和感や鈍い痛み、時に電気が走るような痛みもあり、痛み止めの薬を飲んでいました。術前からの脚のむくみも改善されず、パンパンで痛いほど。「こんな脚じゃスカートもはけない。手術したら良くなると思っていたのに……」と、とても落ち込みました。

 結局、1年ぐらいで痛みはだんだん治まり、今は手術をしてよかったと思っています。ただ、長時間、同じ姿勢をしていると足腰に鈍痛があるので、新幹線の中でも時々、歩いたりしています。

 おかげさまで、医師からは「なにも問題がなければ年に1回ぐらいの検診でいいです」と言われています。でも、これで安心というわけではなく将来的には固定した骨の前後に負担がかかり、別の骨がズレる可能性もあるそうなんです。だから、無理をせず、かつ筋肉を維持して悪くならないように生活を心掛けています。

 病気から学んだのは「いい意味での諦め」です。「前はできたのに」とか「前はスカートをはけたのに」と思ってしまうと、気持ちが落ち込んで精神が病んでしまう。そこからまた違う病気になりかねないので、いい意味で諦めて、できることを楽しんでいこうと思うようになりました。最後の最後に「悔いのない人生だった!」と思えるように、一日一日を納得して過ごしていこうと思っています。

▽かわはら・みなみ 1966年、静岡県生まれ。テレビ東京系の「お天気お姉さん」として注目を浴び、同局の「レディス4」司会やTBS系「筋肉番付」などで活躍。スポーツや韓流イベントの司会も数多く務めた。現在は、KBS京都の情報番組「おやかまっさん」の通販コーナーや「ショップチャンネル」に出演するほか、京都で和小物店を経営している。

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