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そもそもホクロって何? 生える毛はなぜ太くて長いの?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 昔から「ホクロの毛を抜くとがんになる」という俗説がある。一方、中国などではホクロに生えた毛を「宝毛」と呼び、縁起のいいものとされる。それほど関心が持たれるホクロに生える毛だが、周囲の毛より太く、長くなりやすい印象がある。なぜなのか? そもそも「ホクロ」とは、何なのか。「新東京クリニック/美容医療・レーザー治療センター」(千葉県)の瀧川恵美センター長に聞いた。

「ホクロは俗称で、医学的には『母斑(ぼはん)細胞母斑』または『色素性母斑』と呼びます。メラニン色素を作るメラニン細胞が変化した『母斑細胞』が増殖してできる良性腫瘍の一種です。一般的には、小さいものはホクロ、大きいものは黒アザと呼ばれます」

 母斑細胞母斑は大きさで分けられ、直径1.5センチまでの小型のものはホクロと呼ばれる。大半は後天性で3~4歳ごろから発生し、次第に数が増える。盛り上がるものと平らなものがある。直径1.5~20センチのものは黒アザと呼ばれ、多くは先天性で頭や首によくみられ「通常型」ともいわれる。直径20センチ以上のものは「巨大先天性色素性母斑」と呼ばれ、体や手足など広範囲にみられ「特殊型」といわれる。

 これらのホクロや黒アザが黒いのは、増殖した母斑細胞が作るメラニン色素の色だ。そして、母斑細胞母斑に生える毛が、太く長く伸びやすいことにもメラニン色素が関係しているという。

「ホクロがあるから毛が生えるのではなく、たまたま毛穴のあるところにホクロができたから太い毛になるのです。それは母斑細胞の部分はメラニン色素の生成が活性化しているため、毛を作る毛母細胞が刺激されることで毛の成長が促されて太く長くなるのです。黒アザの表面に硬い毛が生えているものは『有毛性色素性母斑』、巨大型で剛毛を伴うと『獣皮様母斑』と呼ばれます」

 つまり、たまたまホクロに毛が生えた状態も、有毛性色素性母斑の一種で何ら不思議な現象ではない。ただし、先天性の巨大型の母斑細胞母斑は、皮膚がん(悪性黒色腫)を発生しやすいといわれている。やはり、「ホクロにできた毛を抜くとがんになる」という噂は本当なのか。

「ホクロ自体は良性腫瘍なので、毛を1回抜いたくらいではがんが発生することはありません。しかし、皮膚はどこでも慢性的な刺激を加え続けると、細胞のDNAが傷ついてがんができる可能性があります。ホクロの毛が気になるようなら抜くのではなく、根元でカットしてホクロはあまり触らない方が無難です」

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