全国の医師が処方した薬 ベスト10

【解熱鎮痛消炎剤】金額ベースでは高脂血症治療薬の3分の1の規模

解熱鎮痛消炎剤の市場規模と上位10薬品
解熱鎮痛消炎剤の市場規模と上位10薬品(C)日刊ゲンダイ

 解熱鎮痛消炎剤の処方量は約47億錠。高脂血症治療薬(約50億錠)に匹敵する数が出ています。しかし薬価が低いクスリが多いため、上位100品目の総額は1226億円と、高脂血症治療薬の3分の1に過ぎません。

 売り上げトップはファイザーのセレコックス錠100㎎で、424億円でした。セレコックスは2007年に発売された、比較的若いクスリです。そのため薬価が高く(69円/錠)設定されているのです。同じセレコックスの200㎎錠は106円/錠で、解熱鎮痛消炎剤のなかでは最も高価なクスリです。合わせて454億円の売り上げを立てています。

 2位のトラムセット配合錠は、トラマドールと呼ばれる麻薬の一種と、解熱鎮痛作用のあるアセトアミノフェンを配合したクスリ。トラマドールはモルヒネよりも弱い麻薬で、副作用も少なく、軽度のがん疼痛の緩和に使われています。しかしトラムセット配合錠は、他の鎮痛剤が効きにくい「非がん性慢性疼痛」の治療に用いるものとされています。薬価は70円/錠で、4番目に高価なクスリです。

 3位のノイロトロピン錠は1976年発売の古いクスリ。ウサギにある種のウイルスを感染させ、その皮膚から抽出した液体を加工して作られます。特許はとっくに切れているはずですが、製造が難しいためか、どこもジェネリックを発売していません。しかし副作用が少なく、腰痛や五十肩に効くほか、帯状疱疹の痛みにも効果があるため、根強い人気を保っているのです。薬価は32円/錠です。

■上位100品目中58品目がジェネリック

 解熱鎮痛消炎剤の多くは、発売からかなりの年月が経っているため薬価が低く、先発薬とジェネリックの価格差があまり大きくありません。先発薬の多くは、1錠当たり15円から30円程度。ジェネリックの多くは数円から20円程度。患者にとっては、ジェネリックに切り替えたとしても、経済的メリットはわずか(窓口負担で1錠当たり数円)です。

 それでも上位100品目のうち、ジェネリックは58品目を占めています。

 処方量は19億2000万錠で、全処方量の41%に達しており、数のうえではジェネリックが成功している市場と言えるでしょう。しかし売上高はわずか149億円、市場占有率は12・2%に過ぎません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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