がんと向き合い生きていく

93歳のおばあさんが治療した分だけ長く生きた意味

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 38歳の孫娘とその夫、ひ孫にあたる小学校1年生のT君と一緒に暮らしている93歳のおばあさんがいます。孫娘は近所のスーパーで働き、夫は単身赴任中で月1回だけ家に戻ってきます。

 おばあさんは、午前中は縁側で日なたぼっこをしながらうつらうつらして、午後にT君が学校から帰ってくると、2人でお菓子を分け合って食べながら、夕方まで過ごします。近所にはT君と同年代の子供がいないこともあって、おばあさんはずっとT君と一緒でした。

 T君はおばあさんのことを「おーばっぱ」と呼んでいます。2年ほど前から、おばあさんはお金の計算ができなくなっていました。算数の宿題があるときなど、T君は「おーばっぱは足し算ができない」なんて少しバカにしたような言い方をするので、お母さんによく叱られていました。

 6月のある日、X線検診を受けたおばあさんの肺に影が見つかりました。病院で「肺がん」だと告げられましたが、おばあさんはよく理解できていない様子でした。高齢なこともあって手術はできないため、これ以上は検査もしない、治療もしないことになりました。

1 / 4 ページ

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事