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【解熱鎮痛消炎剤】「女性のほうが痛みに強い」は本当か

男女の処方量に1.35倍の差
男女の処方量に1.35倍の差(C)日刊ゲンダイ

 よく世間では「女性のほうが痛みに強い」といわれています。女性の体は出産の痛みに耐えられるようになっているからだそうです。もし本当だとすると、解熱鎮痛消炎剤の処方量にも反映されているはずです。

 そこで性別・年齢別の処方量(1人当たり・1年間)を計算したところ、〈表〉のようになりました。男女とも年齢が上がるにつれ、処方量が増えていきますが、同じ年齢では、女性の処方量が、男性よりも多くなっています。 40代前半では1・35倍、年齢とともにその差が拡大し、80代前半ではなんと1・57倍もの開きがあります。女性のほうが、痛みの症状が多いということでしょうか。

 実は、痛みに性差があるという医学的根拠はありません。ただ多くの調査から、女性は痛みを我慢せず、積極的に通院して、クスリを処方してもらう傾向が強いことが分かっています。一方、男性は痛みを我慢する傾向が強く、医者に行きたがらないことも分かっています。その違いが、処方量の差として、表れているのです。

 処方薬だけでなく、市販の鎮痛剤も、買うのは主に女性です。テレビCMや新聞広告などは、すべて女性向けに作られています。オジサン俳優が「サラリーマン諸君、頭痛に○○、我慢せずに飲もう」と語っても、かなり違和感があるでしょう。男性向けは、せいぜい二日酔いのクスリまで。しかし痛みを抱えている人は大勢いるはずで、ドラッグストアなどで、こっそりと鎮痛剤を買って、飲んでいるのかもしれません。

 痛みは強いストレスですから、クスリで解消できるものなら、積極的に使うほうが、精神衛生上も好ましいといえます。ただバファリン(アスピリン)をはじめとする痛み止めの多くは、胃炎や胃潰瘍を引き起こしやすいのです。しかも残念ながら、男性のほうが、そうした副作用が出やすいといわれています。そうでなくても男性は女性よりも胃腸が弱く、3倍も胃潰瘍になりやすいことが分かっています。鎮痛剤を買うなら、一緒に胃薬も買っておくといいかもしれません。

 一番いいのは医者に行くこと。体質に合わせて鎮痛剤を処方してくれますし、必要なら胃粘膜を保護するクスリも一緒に処方してくれます。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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