皮膚を科学する

なぜ山芋の「とろろ」でかゆくなるの? そして対処法は

山芋は非アレルギー性で銀杏やマンゴーはアレルギー性
山芋は非アレルギー性で銀杏やマンゴーはアレルギー性(C)日刊ゲンダイ

「麦」や「米」のご飯と一緒に食べるとおいしい「とろろ」。昔から滋養強壮に良いスタミナ食材として知られる。口の周りや顎などにつくと“かゆくなる”のはなぜなのか。

「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」(東京)の藤本智子院長が言う。

「とろろのかゆみをアレルギー反応と思っている人もいるかもしれませんが、間違いです。山芋をすりおろしたとろろの中には、針状のとがった結晶が含まれていて、それが皮膚にチクチク刺さる。そのため、かゆく感じるのです」

 針状結晶の正体は「シュウ酸カルシウム」。山芋のすべての細胞に含まれているわけではなく、皮付近に多くある結晶細胞内に存在する。1つの結晶細胞の中に含まれる針状結晶の数は、芋の種類によっても違うし、同じ種類の芋でも必ずしも同じではないが、一般的には40~180本といわれる。長さも40~230マイクロメートルと大小さまざまだ。

「通常、針状結晶は結晶細胞の中で針を束にしたような状態で存在しています。それが皮をむいたり、すりおろしたりすることで結晶細胞が崩れて、針状結晶がバラバラに解けて皮膚に刺さる状態になるのです。ただ、それを食べても口の中や消化管は粘膜に保護されているので問題ありません。胃に入れば胃液で溶けてしまいます」

 とろろのかゆみの強さには個人差があるが、かゆいから苦手と避けるのはスタミナ食材としてもったいない。シュウ酸カルシウムは酸に弱いという性質がある。口の周りや付着した皮膚の部分にかゆみが出たら、酢水やレモン水で洗い流すと結晶が溶けてかゆみがかなり軽減するという。

 とろろのかゆみは非アレルギー性だが、植物の中では触れることによって強いかゆみを伴うアレルギー反応を起こす「ウルシ」が有名だ。ウルシでかぶれた経験のある人は、他の植物でもかぶれや発疹を起こすので注意した方がいい。

「ウルシのかぶれは『ウルシオール』という成分によって起こります。この成分にアレルギーをもつ人は、銀杏(ぎんなん)の種皮やカシューナッツオイル、マンゴーとの接触でも交差反応を起こします」

 そのため、ウルシかぶれを経験した人は、銀杏を拾わない、マンゴーを食べない。銀杏拾いでかぶれた人は、ウルシに触らない、マンゴーは食べない。また、マンゴー皮膚炎を起こした人は、ウルシに触らない、銀杏拾いはしない方がいいという。

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