天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

これからは「国民皆保険」で守られてきた医師ばかりという時代になる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 どんな名医でも新人時代があり、外科医ならば1例目の手術は患者さんの体から教わることばかりだった日を経て、今日を得ています。私も含め、医師はみんな「育てられてきた」のです。自分だけでなく、家族もそうです。自分が専門家である制度に守られて、安心して医師を続けられたから今があります。だからこそ、私は心臓外科医として全力で“恩返し”していくことを誓っています。

 2017年は、国民皆保険制度がスタートした1961年から数えて56年目に当たります。現役で医学部に入学し、その1961年に24歳で卒業した医師は80歳になりました。80歳という年齢は、一般的にはリタイア世代といえます。医師の世界でも、周囲からはほぼ“上がり”という評価をされる年齢です。つまり2017年は、24歳で医師になって以来、自分が行った医療行為に対する収入が、すべて国民皆保険でカバーされた世代の医師だけになった年ということになるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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