冬の快眠は体温管理がカギ “3つのNG”を作業療法士が解説

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 夜の冷え込みが一段と厳しくなり、なかなか寝付けなかったり、ぐっすり熟睡できないなんて人も多いだろう。冬の快眠は「体温管理」が重要だ。

 人間には体の表面の温度である体温のほかに、「体の中心部(内臓)の温度」=「深部体温」がある。深部体温は一日のうちで上がったり下がったりするリズムがあって、深部体温が高くなればなるほど体が動くようになり、逆に下がれば下がるほど眠くなる。入眠から睡眠中にかけては深部体温がどんどん下がり、起床に合わせて徐々に上がっていけば、ぐっすり寝て、すっきり起きることができる。

 熟睡するためには、深部体温をしっかりコントロールすることがカギになる。

 作業療法士でベスリクリニック睡眠外来担当の菅原洋平氏が説明する。「体の表面の体温が上がると深部体温も上がります。深部体温がある程度まで上がると、今度は汗をかくことで放熱して深部体温を下げようとする。逆に表面が冷えると、深部体温を上げようとします。気温が低くなる冬は、この深部体温の上下動の仕組みを外から補助してあげることが大切なのです」

■朝の暖房は起床1時間前に

(1)風呂↓就寝までは1時間以上空ける

 一般的に「体を温かくして寝るのが良い」とされている。体が温まると血流が良くなり、放熱されやすくなることで深部体温が急激に下がるからだ。

「しかし、入浴で上昇した深部体温が下がり始めるのは、風呂から上がって1時間後くらいのタイミングになります。それなのに、体が温かいうちに寝た方がいいと思い込み、風呂上がり直後にベッドに入る人も多い。これでは、深部体温は上がったままなので寝付けませんし、熟睡もできません。風呂と就寝までは1時間以上は空けるようにしてください」

 冬はしっかり体を温めようとして入浴剤を使う人も多い。たしかに入浴剤は体温を上げやすくするが、それだけ体温は下がりにくくなる。いつまでもポカポカしているから深部体温もなかなか下がらない。風呂と就寝までの間隔をより長く空ける必要がある。

(2)厚着して寝てはいけない

 寒くて寝付けないからと、パジャマの上にフリースを重ね着したり、体から放出される湿気を熱に変える「吸湿発熱」機能がある下着をつけて就寝する人も少なくない。しかし、人工的にずっと体が温められた状態が続くと、深部体温もずっと上がったままになり、深い睡眠が得られない。

「入眠から就寝中に深部体温を下げるためには、汗をかいて放熱することが重要です。しかし、人工的に体を温める衣類は汗をかいても蒸発しづらくなり、放熱することができなくなってしまうのです。電気毛布やホットカーペットなど、体全体をずっと温め続ける寝具も同じくNGです」

 また、人間は足の裏と頭頂部で多く放熱する。靴下をはいたままだったり、ニット帽をかぶって就寝すると、放出した熱の逃げ道がなくなるため、深部体温が下がらなくなってしまう。タートルネック、袖や裾が絞られているスエットなども同様に避けた方がいい。

(3)暖房のつけっ放しはダメ

 部屋を暖房で暖めっ放しにするのも深部体温が下がらない。

「深部体温が最も低くなるのは、起床から22時間後です。たとえば、朝6時に起きた場合は午前4時に最低になり、そこから起床時刻に向けて徐々に上がっていく仕組みになっています。暖房で部屋がずっと暖かいと、深部体温が最低まで下がらないまま上がってしまう。すると、熟睡できずに寝起きもボーッとした状態になります」

 暖房は寒い朝にすっきり目覚めるために利用したい。起床1時間前に稼働するようタイマーをセットすれば、起床に向けて深部体温が上がる動きを補助することができる。起きた後は温かい飲み物をとるとさらに効果的だ。

 深部体温を意識すれば、冬でもぐっすり眠れてすっきり起きられる。

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