Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

西郷輝彦さん再発 前立腺がんは治療が「5年一区切り」にならない

6年後に前立腺がんが再発(C)日刊ゲンダイ

「現状の体力では、(舞台の)完遂が厳しい」

 そんな苦しさを吐露したファクスを報道各社に発表したのは、俳優の西郷輝彦さん(70)です。体力を奪っているのは、前立腺がんでした。6年前に診断され、全摘手術を受け経過もよく、順調に仕事をされていたそうです。しかし検査の結果、再発したことが分かり、治療を優先し、来年3月に予定されていた博多座公演の舞台を降板すると発表したのです。

 前立腺がんと診断される人は1995年には約1万8000人でしたが、今年は約8万6000人と推計。3年後には約10万5000人にハネ上がり、胃がんを抜いて1位になると予測されています。今回のテーマは、急増する前立腺がんについてです。

 前立腺がんは、治療せずに血液検査で経過観察する「待機療法」が選ばれることがあります。診断されたときから予想される寿命までの間に、生命を脅かすリスクがないと想定される場合に選択される“治療法”です。実際、亡くなった方を解剖すると、死因に関係しない前立腺がんが見つかるのは、80歳で4割に上ります。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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