年をとったら「太る」を目指す

本格的なリハビリの前に十分な栄養摂取から始める

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 元気になりたいと一生懸命リハビリをしているのに、栄養管理が不十分だったために体重が落ち、亡くなってしまった患者さんを目の当たりにし、私は改めてリハビリにおける栄養管理の重要性を痛感しました。今の病院に来る前の経験です。

 そこでまず立ち上げたのが、栄養サポートチームです。医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師などさまざまな専門家で構成されるチームで栄養評価を行います。痩せているか太っているかをBMIでチェックし、体重の最近の増減も調べます。この数カ月で食事量が減っていないか? 禁食がないか?

 これらの結果から栄養管理とリハビリの内容を決定します。栄養状態によっては、本格的なリハビリの前に、十分な栄養を取ることから始めます。この場合、ベッドや椅子に座るリハビリ、呼吸を良くするリハビリなどは行います。

 特に高齢者では、痩せるのは簡単ですが、太るのは難しい。それこそ、何も対策を講じなければ1カ月で10キロも一気に痩せる人は珍しくありません。

 若い時から痩せている人は代謝が良く、そもそも「痩せやすい体質」。1キロでもいいから増やしたいがなかなか難しい時は、とにかく体重の「さげ止め」を図るしかありません。

 口から全く食べられないような人には、経管栄養法があります。鼻あるいは口から胃までチューブを挿入する、あるいは「お腹に小さな口」を作り、胃の中にチューブを入れる「胃ろう」で栄養剤を胃まで送ります。

「点滴ではなく経管栄養法?」と思われる方がいるかもしれません。点滴では栄養素がいきなり血管に入りますが、経管栄養法では腸管や肝臓などを通って体に栄養が入ります。

 すると腸を使うので、腸の粘膜がしっかりします。腸には免疫細胞が多く、免疫力を保ち、感染症になりにくい。つまり、死亡しにくくなるのです。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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