全国の医師が処方した薬 ベスト10

【総合感冒薬の処方量】県民1人当たりの日本一は山口県

県民1人当たりの日本一は山口県
県民1人当たりの日本一は山口県(C)PIXTA

 総合感冒薬の処方量を都道府県別にみると、実に3倍近い格差があることが分かります。県民1人当たりの処方量がもっとも多いのは山口県(5・5包・錠)。もっとも少ないのは山形県(2・0包・錠)でした。

 総合感冒薬は単価が安いので、病院で数日分を処方してもらっても、患者負担は100円から200円ほどにしかなりません。ただし病院に行けば、初診料や検査料がかかりますし、ほかのクスリも処方されるかもしれません。さらに調剤薬局で、「調剤料」や「指導料」などが発生します。市販のかぜ薬を買うのと、どちらが得かは微妙なところです。むしろ市販薬のほうが、安くつく場合が多いかもしれません。

 政府は、副作用が少なく、効き目が安定している薬剤の、市販薬への転換を進めています。いままで医師しか処方できなかった「医療用医薬品」を、一般のドラッグストアなどで自由に買えるようにしたものは「スイッチOTC薬」と呼ばれています。OTCは「over the counter」の略。つまり「薬局のカウンターで誰でも買える」という意味です。ロキソニンやバンテリンは、その代表格です。

 解熱鎮痛剤をはじめとする処方薬をスイッチOTCに転換すれば、軽い症状の患者の多くが病院に行かず、自分でクスリを買って治すようになるはずです。「セルフメディケーション」と言って、1990年代から注目を集め、いまでは医療費抑制の切り札として、各国で推奨されています。日本も今年1月から「セルフメディケーション税制」を導入し、推進しているところです。スイッチOTC薬を自費で購入すると、1世帯で合計1万2000円を越えた分を所得から控除してくれます(OTC薬控除)。

 市販のかぜ薬にも、スイッチOTC薬が配合されています。〈表〉には各県の、県民10万人当たりのドラッグストア数も載せました。ドラッグストアの軒数が多ければ、病院での処方量が減るはず。ところが数字を見る限り、あまり相関はなさそうです。

 処方量の少ない県は、医者が足りないところばかり。かぜぐらいで、いちいち病院にはかからないのでしょう。病院のクスリを減らすためには、スイッチOTCよりも、病院や医者を減らすほうが効果的ということかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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