何かとストレスが多い年末。パーティーに私だけ呼ばれていない……なんて時に「胸がチクリと痛む」などと言いますが、そうした場合でも「痛み止め」が効果ありというニュースが話題になっています。
その痛み止めは、アメリカの家庭や病院で最もよく使われている解熱鎮痛剤「アセトアミノフェン」(商品名タイレノール)です。ケンタッキー大学のネイサン・デウォール教授が「心の痛みと体の痛みはどう違うのか」という心理的疑問に着目。研究過程で「人が社会から拒絶されたと“痛み”を感じた時、アセトアミノフェンが和らげる」ということがわかったのです。
アセトアミノフェンを飲んだ人の脳の中では、社会的苦痛を感じる部位の反応が鈍くなると画像検査で判明。臨床実験でも、アセトアミノフェンを飲んだ人の方が心の痛みを訴える頻度が減少しました。その度合いはそれほど大きなものではありませんが、社会的苦痛に対して鈍感になるのは間違いないそうです。
この学説が最初に発表されたのは2010年で、その後も似たような研究結果が報告されています。
「アセトアミノフェンにより感情的なアップダウンが抑制できる」「他人への同情心も弱まる」「境界性パーソナリティー障害の人の他人への猜疑(さいぎ)心が緩和」といったものです。カナダのブリティッシュコロンビア大学のトッド・ハンディ教授は「アセトアミノフェンにより外界への関心が下がり、外の刺激から隔絶され、意識が散漫な状態になるのではないか」と分析しています。
ただし、こうした効果を狙って鎮痛剤を習慣的に飲んだり大量に摂取するのは、胃を荒らしたり肝臓への悪影響もあるため、絶対にお勧めできないと医療関係者は強調しています。
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