年をとったら「太る」を目指す

サルコペニアで嚥下障害 口から食べるために栄養管理を

年をとっても自分の身体機能の力で食べたい
年をとっても自分の身体機能の力で食べたい(C)日刊ゲンダイ

 胃ろうに対してマイナスの印象を抱いている人が多いように思います。「一度付けると一生外せない」「無理やり栄養を取らせている」「かえって患者さんをつらい状態にしている」といったイメージがあるのでしょうか。栄養状態が悪い患者さんへ、本格的なリハビリの前に胃ろうなどの経管栄養法を勧めると、「できればそれ以外の方法で」とおっしゃるケースもあります。

 確かに、末期がんや認知症の終末期の患者さんであれば、経管栄養法の必要はありません。しかし、本格的なリハビリを考えている患者さんであれば、栄養状態を良くするのに経管栄養法は有効です。栄養改善で、口から食べられたり、歩けたりする可能性があるからです。

 私が今、医療関係者や患者さんに知ってもらいたいことのひとつが、サルコペニアの嚥下(えんげ)障害です。

 サルコペニアとは、加齢、低活動、低栄養、疾患によって筋肉量が減少し、全身の筋力や身体機能の低下が起こることです。嚥下障害がある患者さんには、サルコペニアがしばしば見られます。筋力低下は、喉にも起こります。それによって「ゴックン」という食物ののみ込みをうまくできなくなるのです。

 栄養状態を改善しなければ、低栄養によるサルコペニアは改善されません。つまり、サルコペニアの嚥下障害も改善されない。栄養状態が悪化すると嚥下障害もますます悪化し、悪循環に陥ってしまいます。

 実は「サルコペニアの嚥下障害」は、あまり認知されていません。だから、「サルコペニアを改善して嚥下機能を取り戻そう」という試みもあまりなされていません。

 末期のがんや認知症、脳卒中がなく、嚥下障害がある場合は、サルコペニアによる嚥下障害も疑い、主治医やリハビリ医に相談してください。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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