がんと向き合い生きていく

「いつまでも 生きている気の 顔ばかり…」人間はそれでいいんだ

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「このまま家に帰れないかもしれないと思ったのに、本当によかった。それにしても、同室のみんなも大変だな。よく、じっと我慢してベッドに寝ていられるものだ。でも、そうするしかないものな。やっぱり、覚悟ができているのだろうか」

 ただ、Rさんには3人とももう死が近いような顔にはとても見えなかったといいます。

 Rさんの治療は3週間中断しましたが、外来で再開され、その後のCT検査では前回と比べて素人目にもがんが小さくなっているのが分かりました。いつの間にか切羽詰まった心の緊張感も消え、1年の命、3カ月の命、死の覚悟……といったことはあまり考えなくなっていました。

 Rさんは、同室だった70代のKさんが「自分は来春までもたないかもしれない」と言いながら「春にはリンゴの木を植えるんだ」と言っていたことを思い出すそうです。

「来年の春、孫は小学校に入学する。なんとしても生きなきゃ。いつまでも生きている気の顔ばかり。人間はそれでいいんだ」

 そう思えるようになりました。

4 / 4 ページ

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事