急激に寒さが厳しさを増し、インフルエンザの季節になりました。賛否両論はあるものの、「予防」するためにはワクチン接種が効果的なのは間違いありません。
ワクチンの効果は接種した人だけでなく周囲の人たちの罹患リスクも軽減します。高齢者や子供がいる家庭では、なおさら接種をすべきといえます。ワクチン接種から抗体ができるまでには数週間かかるとされていますので、打つのであれば早めがおすすめです。ただ、インフルエンザワクチンといえば、よく供給面の問題が取りざたされます。とりわけ今年はワクチンのもととなる「ワクチン株」の選定が遅れたことで、ワクチン不足が懸念されていました。
では、なぜインフルエンザワクチンを大量生産できないのでしょうか。その答えは製法にあります。今のところワクチンは鶏卵を用いて作られるため、一般的な医薬品(化学物質)と同じように大量生産することができないのです。
今後は、ワクチン不足を解消するために大量生産が可能な新しい製法の開発が求められています。メーカーを含めたわれわれ医療従事者も供給面の問題について考えるべきでしょう。
インフルエンザや風邪の治療に関して、もうひとつ大きな問題があります。「抗生剤」の乱用です。インフルエンザや一般的な風邪はウイルス感染なので抗生剤は効きません。抗生剤は「菌を殺す薬」で、ウイルスは殺せません。そして、直接炎症を抑える薬でもないのです。
しかし、日本は「抗生剤の乱用大国」とされています。不適切に抗生剤をたくさん使っていることによって、「薬の効かない菌」=「耐性菌」の発生も問題となっています。
これからは、医療従事者だけでなく患者さん側も、抗生剤の乱用について考える必要があると思います。病院にかかった時、抗生剤が処方されなくても、その先生をむしろ評価する視点を持つべきではないでしょうか。
クスリと正しく付き合う