血糖上げずカロリー摂取 糖尿病高齢者はどう食べるべきか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 超高齢社会で、糖尿病を抱える高齢者が多い。血糖値を上げず、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋肉量減少による身体能力低下)を避けられる食事法は? 糖尿病の栄養療法の第一人者である駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科の西村一弘教授に聞いた。

 西村教授は、東京・東村山の緑風荘病院で糖尿病患者や腎疾患患者の食事指導を行っている。病院で実際に取り入れているのが、「中鎖脂肪酸」「パラチノース」「乳和食」だ。

 食事をして短時間に血糖値が急上昇し、正常値に戻ることを「血糖値スパイク」という。この血糖値スパイクが繰り返されると動脈硬化が進行、心筋梗塞や脳卒中などの突然死を高める。血管が劣化している糖尿病の高齢者は、特に意識して血糖値スパイクを避ける食事をしなくてはならない。

 一方で高齢者の場合、フレイルやサルコペニアの問題もある。いずれも要介護状態を招きやすく、死亡リスクを高める。血糖値スパイクを避ける食事を意識し過ぎてフレイルなどを招けば、本末転倒だ。

「血糖をコントロールし、かつカロリーを摂取する食事として、この3つが非常に役立ちます。糖尿病では腎機能にも影響を及ぼしますが、タンパク質摂取に注意が必要な腎疾患患者さんにも、3つは有効です」

■中鎖脂肪酸、パラチノース、乳和食

 中鎖脂肪酸は、植物油の主成分である脂肪酸の一種。肥満対策、認知症予防、フレイル・サルコペニア対策などさまざまな可能性が期待される機能性成分だ。一般的な油より速やかに消化・吸収され、すぐにエネルギーになりやすい特徴がある。 

「中鎖脂肪酸はパウダー状のものが市販されています。無味無臭なので、味噌汁や料理に入れても違和感を覚えません。糖尿病でなくても、痩せている高齢者の方は、中鎖脂肪酸のパウダーをスープや味噌汁などに加えて日常的に取るようにするといいでしょう」

 パラチノースは砂糖から作られた甘味料だ。ハチミツに含まれる希少物質「イソマルツロース」の大量生産に成功した「三井製糖」の登録商標である。砂糖とは違う作用機序を持ち、消化吸収速度は砂糖の5分の1になる。 

「吸収がゆっくりなので血糖値の上昇も緩やかです。すると、インスリンが急激に血糖値を下げようとしないので、血糖値の急激な上昇・降下を避けられます。これによって膵臓への負荷が抑えられ、心血管障害などのリスクを抑えられます」

 甘味料にはパラチノース以外にもあるが、ほとんどがカロリーゼロ。フレイルやサルコペニア回避も考えなければいけない高齢者には向いていないケースもある。パラチノースは甘味度が低く、通常の砂糖の使用量より多く使えるところもポイントだ。

「乳和食」は、牛乳をはじめとする乳製品を用いた和食のこと。

「乳製品をご飯など糖質と一緒に取ると、血糖値の上昇がゆっくりになります。うま味の宝庫である牛乳はだし代わりになり、調味料を減らして減塩にもつながります」

 味噌との相性が良いので、味噌汁や豚汁に入れる。卯の花炒り、きんぴらゴボウ、カボチャのそぼろ煮、筑前煮などさまざまな和食に合う。牛乳が苦手な人にも「おいしい」と評判だ。

「中鎖脂肪酸、パラチノース、乳和食を3つ同時に行えば、高齢者の血糖コントロール、加えてフレイル・サルコペニア対策にかなりの効果が期待できます」

 西村教授が危惧しているのは、高齢者の糖質制限だ。

「糖質を控え、タンパク質を積極的に取るといいと考えている方もいます。しかし、タンパク質だけでは筋力合成がうまくいかず、かえって筋力減少につながることもあります。うまく糖質を取っていく必要があります」

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