皮膚を科学する

「頭皮が硬いとハゲる」は本当なのか?

頭皮マッサージは有効か
頭皮マッサージは有効か(C)日刊ゲンダイ

 頭皮を両手でつかんで、前後左右に動かしてみる。硬く突っ張って、あまり動かないようなら「ハゲる」と言われるが本当なのか。「心斎橋いぬい皮フ科」(大阪府)の乾重樹院長が言う。

「昔からよく言われますが、科学的根拠はありません。男性の頭皮は女性より硬いので、それからの類推で言われているのではないでしょうか。頭皮が硬いと“血行が悪い”という説がありますが、そもそも頭皮は血流が豊富です。頭皮の硬さと血行は関係ありません」

 男性型脱毛症(AGA)が起こるメカニズムは、すでに解明されている。主な原因は、男性ホルモンのテストステロンが「5α-リダクターゼ(5αR)」という還元酵素によって変換されてできる「ジヒドロテストステロン」という強力な男性ホルモン。この物質が前頭部や頭頂部に作られると、毛細血管から栄養分を取り込んでいる毛乳頭が萎縮し、毛を作る毛母細胞の成長が抑制される。そのため髪の毛が成長する前に抜けてしまい、細く短い毛が多くなる症状が進行する。

「5αRが頭部のどの部分に分布するかによって、脱毛のパターン(型)に関係してきます。また、変換されたジヒドロテストステロンが毛乳頭に強く作用するかどうかは、その人が持つ男性ホルモンに対する感受性によって違います。どちらも遺伝的素因が影響します」

 5αRの分布は、両親からの遺伝子の影響を受けている。そして男性ホルモンに対する感受性は、母親方の遺伝子が関係しているという。だから「ハゲは遺伝する」という説は、ウソではないようだ。ただし、薄毛や脱毛は多様な要因で起こるので、祖父や父親がハゲていたからといって、必ずしもハゲるわけではないという。

 では、頭皮を「マッサージする」「櫛(くし)で叩く」ことはハゲ予防に有効か。

「頭皮をもみ込むのは意味がありません。櫛で叩くことは、たとえばマウスに創(きず)をつけると毛の周期が成長期誘導されることが知られていますが、人でのデータはありません。そんなことをやるよりも、AGA治療薬を使う方がよほど効果があります」

 AGA治療では、5αRの働きを阻害する「デュタステリド」「フィナステリド」(内服)や、発毛・育毛を促進させる「ミノキシジル」(外用)などが使われる。

 では、白髪の人はハゲないという説はどうか。

「白髪は黒髪より太いというデータはありますが、AGAにならないというデータはありません」

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