中高年にとっての虫歯

子供との違い 中高年の虫歯は気づきにくいのに進行が早い

4割以上がコレで歯を失う
4割以上がコレで歯を失う(C)日刊ゲンダイ

「歯を失う原因は歯周病」――。

 そう信じ込んでいる人は大勢いるが、中高年の虫歯を侮ってはいけない。虫歯で歯を失う人は全体の4割以上に上るといわれる。子供と中高年の虫歯は何が違うのか? 

 自由診療歯科医師で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

 厚労省の「平成28年歯科疾患実態調査」によると、歯を失う人の割合は30~34歳が11.5%、35~39歳が20.5%、40~44歳が31.1%、45~49歳が41.1%、50~54歳が61.5%、55~59歳が72.8%、60~64歳が79.2%、65~69歳が87.9%と増えていく。

 一方、虫歯のある人の割合は25歳以上80歳未満では80%以上、35歳以上55歳未満ではほぼ100%となる。

「虫歯のある人の割合は55歳から減少しますが、それは歯が完全になくなるか、虫歯になりやすい歯が少なくなるからです」

 歯を失うことは想像以上に体にダメージを与える。食べ物をどれだけ効率的に噛み砕けるかを測る指標として咀嚼効率があるが、最も高い咀嚼効率を持つ奥歯(第1大臼歯)を1本失うと咀嚼効率は40%以上低下する。

「胃や腸などの消化器官に負担をかけるだけではありません。噛み合わせが悪くなり、肩こりが起きたり、口腔内の機能が低下することで誤嚥性肺炎のリスクが高まります。脳への刺激が減って認知症などにも影響します。歯列が乱れるので歯磨きがしづらくなり、さらなる虫歯を招く可能性も高くなる。中高年の虫歯は歯の喪失に直結する恐ろしい病気なのです」

 しかも中高年の虫歯は子供の虫歯と違って、「気づきにくく、進行が速い」という特徴がある。

「子供の虫歯は口のなかの細菌が糖質をエサにして酸を作り、歯のエナメル質を溶かすことから発生します。そのため、砂糖を含むお菓子などを食べるなどして咬合面にもできやすくなります」

 ところが、中高年の虫歯は、加齢や歯周病によって歯茎が後退し、露出した歯根部分に発生する。

「歯根はエナメル質より軟らかい象牙質でできており、進行も速く痛みが出にくいのです。しかも、奥歯や歯と歯の間の歯根は見えにくいため、虫歯に気づかず、発見の遅れにつながるのです」

 大人の場合、過去の虫歯治療で詰め物やかぶせ物をしているケースが多く、そこも虫歯が発生するという。

「既に何度も歯の治療をしている中高年はかぶせ物や詰め物をしている歯が多く、その内部に虫歯ができると、気がつかないうちに患部が奥深くにまで達してしまいます。とくに神経を抜いた歯の場合は、痛みを感じにくいので、発見がさらに遅れがちです」

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