風邪だと思っていたら重大病 注意点を呼吸器専門医が解説

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今年もあと1週間で終わりだが、どういう場合の“風邪症状”に注意すればいいのか?池袋大谷クリニック・大谷義夫院長(呼吸器専門医)に聞いた。

「一般の人がわかりやすいのは、期間です。2週間をひとつの区切りと考えてください」

 感染症である風邪であれば、2週間以内に自身の免疫が働き、症状は改善する。2週間以上、風邪のような症状が続くなら、もはや風邪ではない。風邪から別の疾患に移行している可能性もある。呼吸器内科を受診すべきだ。

 ただし「2週間未満であっても病院に来て欲しいケースがあります」というのは、咳の状況だ。

 咳がひどくて生活に支障がある。その場合は、呼吸器内科あるいは耳鼻咽喉科へ。

■夜間の咳には注意するべし

 くしゃみ、鼻水も確かにつらい症状だが、重大病に発展するケースは少ない。しかし、ひどい咳は睡眠の質を妨げ、免疫力低下につながる。もっと心配なのは、場合によっては命を落とすリスクもはらんでいるからだ。

 要注意なのは夜間の咳だ。

「喘息、咳喘息は、夜間に咳がひどくなります。そしてもうひとつ、心不全も夜間の咳として症状が出る。横になることで水分が肺にたまりやすくなり、それが咳となって表れるのです」

 高齢者以外の患者では、「咳が止まりません」という場合、大半が喘息か咳喘息だという。喘息は小児の時に発症するイメージが強いが、実際は、成人以降に初めて発症する患者が多い。風邪から移行して喘息に至ることもある。

「喘息と咳喘息の違いは、ヒューヒューゼーゼーの喘鳴があるかないか。ある方が喘息です。どちらも治療は吸入ステロイド剤などで、様子を見て治療の継続を考えます」

 心不全が疑われる場合は、循環器の医師へ紹介し、適切な治療が開始される。

 日中も含めて咳が続くようなら、肺炎、結核、肺がんの疑いも否定できない。結核はいまだ毎年死者も出ており、過去の病気ではない。

「喘息、咳喘息、心不全も含め、ひどい咳や長引く咳があれば、レントゲン検査は必須です。診断あるいは除外診断に役立ちます」

 大谷医師のクリニックを訪れた70代の患者で、診察時はさまざまな検査から「喘息の悪化」と診断、吸入ステロイドを処方した。レントゲン検査でわずかな影が疑われ、CT検査をしたが、翌日その結果を見ると、軽い肺炎を起こしていた。患者さんに改めて来てもらい、肺炎と伝え抗菌剤を処方。ところが、「ネットで調べたら、漢方でなんとかできると思い、吸入ステロイドはまだ使っていません。抗菌剤も必要ですか?」と言う。

「喘息が悪化すれば、痰が増え菌が増殖するので、肺炎も悪化する。肺炎は死亡リスクの高い疾患です。慌てて患者さんに、喘息に漢方薬が良いとはガイドラインでは出ていないことを伝え、とにかく指導通りに薬を服用してもらうように言いました」

 風邪だから、と甘く見ていれば、年代によっては命取りになる。

 さらに高齢者で咳が続くようであれば、嚥下障害も考慮に入れなければならない。

「誤嚥性肺炎というと食物が原因と考えがちですが、実は唾液をうまく飲み込めないことが引き金になっているのです」

 嚥下障害も肺炎につながる。もし咳の原因に嚥下障害があるなら、それを改善するための運動や生活習慣を身につけなければならない。

 なお、咳の強さと重大病の有無は必ずしも一致しないという。

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