年間患者数が500人突破 人食いバクテリアはこうして防ぐ

人食いバクテリア(国立感染症研究所から)
人食いバクテリア(国立感染症研究所から)

 手足を壊死させる「人食いバクテリア」の患者が増えていると話題になっている。「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」という病気で、1993年に初めて報告された。患者数は年間に100人前後だったが、2012年に200人を突破。15年に279人だったのが、国立感染症研究所によると、今年は初めて500人を超えたという。

 感染症というと、他人のツバや体液、食べ物からうつるものと思ってしまうが、この病気は少し違う。医学博士の米山公啓氏によると、正式の表記は「溶血連鎖球菌(溶連菌)」で、全ての人が子供の頃から喉や皮膚に持っている菌という。

「それが30代以上になると、何かの拍子に体内で悪さをするようになるのです。ただし、何が原因でそうなるのかは分かっていません。体内にある溶連菌の毒素が筋肉の膜を溶かして壊死させたりする。壊死は1時間に数センチと急速に進み、手足を切断するケースもあります。重篤になると患部組織壊死のほか急性腎不全、多臓器不全などを引き起こしてショック死することもあり、死亡率は3割に上ります」(米山公啓氏)

■検査は保険適用

 急増の原因ははっきり分かっていないが、溶連菌がウイルスに感染して遺伝子が変化したことで感染性が強まったという説などがある。このほか米国で洪水のあと発症したケースがあるため、手足などの傷口から溶連菌が体内に入ったのが原因という見立ても。

 予防法は……?

「早期発見しかありません。手足に疼痛が走るとか赤く腫れ上がる、高熱が出た、悪寒や下痢になるのが黄信号。ただし、この病気の症例を診た経験のある医師が少ないので、診察のとき『いま話題の人食いバクテリアじゃないですか』と聞いて、念のため検査してもらうほうがいいでしょう。検査は保険で受けられます。糖尿病で免疫力が落ちている人や、インフルエンザや性病にかかりやすい抵抗力の弱い人、高齢者は特に注意が必要です。早期発見されればペニシリンの投薬で治ります」(米山公啓氏)

 春夏秋冬を問わず、いつ誰でも感染する可能性があるというから恐ろしい。風邪やインフルを予防して頑健な体を維持するのが唯一の予防法といえそうだ。

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