医者も知らない医学の新常識

排ガス汚染された空気の中でのジョギングは肺に悪い?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健康のために、ウオーキングやジョギングを習慣としている方は多いと思います。東京では皇居周辺などで毎日たくさんの人が、思い思いに走ったり歩いたりしています。

 最近は高齢者のランナーも目立ちます。それを見ていていつも疑問に思うことは、都心のような排ガスなどで汚染された空気の中で、運動をすることが本当に健康に良いのだろうか、ということです。

 そんな疑問に答えを与えてくれるような研究結果が、今年のランセットという一流の医学誌に掲載されました。イギリスで60歳以上の心臓や肺の病気を持っている人と、病気のない人を登録して、交通量の多い道路と公園の2カ所で、2時間のウオーキングをしてもらいます。

 公園でのウオーキングでは病気のある人もない人も、同じように呼吸機能が改善するような効果がありましたが、交通量の多い道路でのウオーキングでは、その効果は全体に低下していました。

 更に肺の病気のある人では、道路でのウオーキングにより、咳や痰、息切れなどの悪化が見られました。つまり、ウオーキング自体には呼吸機能を改善するような働きがあるのですが、空気が排ガスなどで汚れていると、その効果は減弱しますし、肺に病気のある人では、かえって悪い空気を吸い込んで、病状が悪化することもあるようです。くれぐれもウオーキングは空気の良いところでするようにして下さい。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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