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秋から冬は抜け毛が増えるは本当か 頭髪なら1日何本?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 犬や猫などの動物は、春と秋に抜け毛が増えて、新しい毛への生え変わりが集中する「換毛期」がある。季節に応じて暑さや寒さの対策のため、春は体の表面を覆う硬いオーバーコート(上毛)が増え、秋は保温性の高い短いアンダーコート(下毛)が増えるという現象だ。

 人間でも「秋から冬は抜け毛が増える」といわれる。よく夏の紫外線のダメージや夏バテなど体力低下の影響が要因として指摘されるが、本当のところはどうなのか。「心斎橋いぬい皮フ科」の乾重樹院長が言う。

「夏以外でも体調が悪くなることはあるので、体調は関係ありません。秋に髪の抜け毛が増えると感じるのは、人間が動物だった頃の換毛期の名残です。夏の終わりから秋にかけて休止期の毛の比率が少し増えます」

 通常、頭髪のサイクルは、毛細血管から栄養分を取り込む毛乳頭が活発になり、毛を成長させる「成長期(早期、中期、後期)=4~6年」→毛乳頭の活動が弱まり、毛を作る毛球部が徐々に萎縮する「退行期=約2週間」→毛乳頭の活動が休止する「休止期=約3カ月」→「成長期」の工程を繰り返している。この休止期に髪が抜けるのが、正常な抜け毛だ。だから、秋に少しくらい抜け毛が増えても自然な現象で、心配する必要はない。では、頭髪は通常1日に何本くらい抜けているのか。

「個人差がありますが、日本人の頭髪は平均10万本くらいとされています。そのうち1日に平均で80本くらい抜けますが、毎日同数抜けるわけではないので、100本くらいは普通です。ところがAGA(男性型脱毛症)になると、成長期が短縮されてしまい、結果的に退行期、休止期の比率が増えてしまうのです」

 人の体の毛包(毛穴)の数は生まれる前の胎児6カ月すぎには決定され、その数は生まれてから一生変わらないとされる。ただし、頭髪の太さや数には人種差がある。アジア人の頭髪は太くて数が少なく、欧米人は細くて数が多いという。その違いは、住んでいる地域の気候などが関係しているのだろうか。

「それはないでしょう。もし影響があるのなら海外に移住したら髪がフサフサになったり、薄くなったりするはずです。大昔に欧州から米国や豪州に移り住んだ人たちを見れば分かります。もちろん人類が進化の過程でかなり長い年月をかけてそれぞれの季候や環境に適応した結果である可能性はあります」

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