天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓の悪性リンパ腫の手術でチーム医療の重要性を再確認

順天堂大学医学部の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 術前検査の結果、その患者さんは心臓に薬剤の集積が認められました。ただ、この段階では「心臓に悪性疾患が疑われる腫瘍がある」ということがわかっただけで、悪性リンパ腫だと診断が確定したわけではありません。はっきりさせるためには、開胸手術で心臓の腫瘍を切除し、病理診断検査を行う必要がありました。

 悪性リンパ腫は血液細胞を由来とするがんで、白血球の一種であるリンパ球ががん化した疾患です。頚部、わきの下、太ももの付け根部分のリンパ節に腫れが起こる場合が多いのですが、まれにリンパ節以外の臓器に腫瘍などの病変が発生するケースがあります。血液は体の隅々まで巡っているため、全身のどの場所にも表れる可能性があるのです。レアケースとはいえ、心臓も内部は血液で満たされているわけですから例外ではありません。

 その患者さんを開胸して病変を確認してみると、心臓の右心室の筋肉に腫瘍ができていました。その腫瘍を心臓の機能を損なわないようにきれいに切除し、術中に病理診断に出して、悪性リンパ腫であることが確定したのです。

2 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事